[落石発動地点接近中、距離500メートル]
あたしはそこで馬を下り、走って落石地点まで行く事にした。
ゲームプレイ時に馬に乗ったままの進入はほぼ不可能だったことを思い出したから。
走り出してそう経たない内に、あたしは見覚えのある後姿を目にする事になった。
と言っても、今まで目にしてたのはテレビ画面の中の後姿だったけど。
「くっ・・・このままでは無駄に兵たちを死なせてしまうだけだ・・・。」
「兄者、拙者と翼徳が活路を開いて参る。暫し待たれよ。」
「おう!兄者!!行こうぜ!!」
「お待ち下さい!!!!」
曹操に出会ったさっきと同じ位鳴り響く緊張しまくる心臓音、
それを押さえ込む勢いであたしは大声で3人に声を掛けた。
「・・・?そなたは・・・?」
「孫堅軍が武将、と申します!申し訳ありませんが、説明をしている暇がありません。
すぐに私が先へ行き、この落石を止めてまいりますのでそれまで少しだけお待ち下さい!」
「何だって!?おめぇがこの落石を止めるだぁ?」
余りに唐突過ぎるあたしの申し出に、張飛が驚いた顔つきで目を丸くしてあたしを見下ろす。
ま、当然といえば当然の反応だ。
関羽がじっとあたしを見据え、そして静かに口を開いた。
「兄者、この者、女人ながら勇ましき武人の瞳を持ち合わせている。ここはひとつ任せてみてはいかがか?」
「そうか・・・、雲長がそう言うのならば相違ないだろう。
とか申したな?お前に先の落石を任せていいだろうか?」
「はい・・・っ!」
緊張で喉をカラカラにしながらも、あたしは半分掠れ声で返事をした。
張飛が更に驚いた顔で2人に目を向ける。
「おいおい、本気かよ!?兄者達!?いくら可愛い姉ちゃんでもそれとこれとは別だぜ!」
「翼徳、今はそんな事を言い争っている場合ではない。」
「兄者の申す通り。翼徳よ、我らの答えが気に入らぬかもしれぬが、暫し待て。」
「では!すぐに止めてきます・・・!」
あたしはそれだけ行って全速力で落石地点へ向かった。
張飛は明らかに納得いかなげな顔だったけど、他の2人の言うとおり、
ここは我慢してもらわなきゃいけない。
特に『難しい』になるとプレイヤーが動かなきゃ、このゲーム悲惨だもんなーー。
ワァァ・・・
「!!」
そんなことを考えながら走っている間に一般兵の叫び声が密集してる場所に到着し、
気付けばゴロゴロと岩がこっちに転がってきていた。
あたしは素早く横に飛んでそれをかわし、次の岩が転がって来るより早くその場を駆け抜けた。
周りでは哀れっぽい例の悲鳴を上げている黄巾兵達の姿。
これが自分たちの上に立っている張宝の仕業だってんだから、気の毒と言えばそうかもしれない。
「・・・と、急がないと。」
あの様子じゃさっさとどうにかしないと張飛が痺れを切らして進軍して来る可能性大。
ハッキリ言って今の難易度設定じゃ、『さっさとどうにか』出来るかかなり疑問だけど、
実は今だって結構体力削られてるけど、そんなこと言ってる場合じゃないから。
「この凡愚めぇぇ!!!張梁の痛み、その穢れた体に刻み付けてくれるぅぅっ!!」
「っはぁぁっ!!」
出会い頭に溜めていた無双ゲージを解放して、無双乱舞を発動する。
ぐんっと何度も体を引っ張られるような感覚と同時に、
体が円を描きながら張宝と一緒に周りにいた黄巾兵を巻き込んで吹っ飛ばす。
その後も通常攻撃やチャージ攻撃で攻め続け、
次々と黄色の動かない『人形』があたし達の周りに出来上がっていった。
「クッ・・・この小娘がぁぁ!!」
「悪いけど、あんたで手間取ってる訳にいかないから!!」
あたしはそう言って、張宝にもう1度無双乱舞をお見舞いする。
それが最後の決め手になって、張宝は叫び声を上げて倒れた。
フワリ、いつものようにアイテムが現れて槍に吸収される。
・・・バーチャル・・・これはバーチャル・・・。
あたしは心の中でそう念じて、どうにかいつもの精神的打撃ってヤツを緩めようとした。
気休めにしかならない事くらい、分かってるけど。
[張宝撃破、落石停止。義勇軍、進軍再開。]
あたしはホッと胸を撫で下ろし、
さっき曹操の所に向かった時と同じように拠点で回復アイテムを取って劉備達の来るのを待った。
手元の槍で何気無く撃破数を表示すると、いつの間にか423と言う数字が並んでいる。
・・・・・・・夢中だったからなー・・・、て言うか、これからが大変なんだけどさ・・・・・・・。
顔を上げると、劉備があたしの方に馬を駆けさせて来てるところだった。
「、お前の見事な働き、感謝するぞ!」
柔らかな笑みを浮かべて彼が馬から下りる。
あたしは慌てて首を左右に振り回した。
「いえ!私はただ・・・落石を止めたくて・・・・。」
劉備の後に続いて関羽と張飛があたしの傍へ走ってきた。
「うむ、おぬしの武、まさに女人とは思えぬ程に見事であった。
・・・拙者の考え違いでなければ殿、おぬしはあの『鬼姫』ではござらんか?」
あたしは一瞬どう答えようか迷ったけど、結局頷いてみせた。
曹操の時も思ったけど、ノリのギャグで作られた称号にしては、キャラ達皆過敏に反応し過ぎだ。
案の定、関羽のすぐ隣に居た張飛がすっとんきょうな声を上げる。
「何ぃぃ!?鬼姫だと!?そりゃすげぇや!通りで仕事が早い訳だぜ。」
「・・・そんな・・・・夢中だっただけです・・・。」
感心しまくりな張飛に苦笑して答えるあたし。
ほんっと・・・そんなご大層なもんじゃないし・・・・・・・・・。
「兄者、戦はまだ終わってはござらん。先を急がねば。」
「そうだな。、改めて礼を言おう。お前の働きのおかげで本当に助かったぞ。」
「あっ・・・は・・・はい・・・っ!おっお役に立てて光栄です!!!」
上ずる声でそう言って、あたしは思わず頭を下げた。
劉備は優しげに目を細めると、また馬にまたがる。
「我らは先を急ぎ、他2軍と合流する。お前も陣に戻るがよい。」
そう言って、彼はそのまま馬の腹を蹴って駆けて行った。
「では、御免!」
「そんじゃな!有り難うよ!」
関羽、張飛も彼に続いて走って行ってしまった。
馬についていける脚力があることが不思議だけど、この世界でそんな事ツッコンでちゃいけない。
・・・・・・・・・・・後は他のモブ武将全部倒して・・・・・・、最後に張角か・・・・・・・。
難易度の高い張角は、初期ステージだろうと侮れない。
例え『ほぅっ』と言う掛け声がどんなに甲高くてどんなに間抜けでも、
『難しい』設定の張角はかなりの強敵だ。
修羅じゃなくて良かった・・・・・・・・、ホントに・・・・・・。
心底そう思いながら、あたしは他の武将を倒して孫堅軍の居場所へ戻ることにした。
(黄巾の乱・3 -4へ続く-)
後書き
ヤバイ・・・まっさかこんなに続くとは!
でも次回で9話は完結です。そして・・・ここでお詫びを・・・。
策編も読んで下さっているお客様、黄巾の乱・1と最終話を除いては、
この2と3は共通シナリオになります。
かなり考えたんですが、やっぱり曹操と桃園3兄弟は外せない・・・。
でも一応策編なんで1と4は恋愛要素含むつもりです。
では、こんな言い訳まで書いてしまって申し訳ありませんでした。
ここまで読んで下さって有り難うございます!失礼致します。
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