「おお、!戻ってきおったか!随分と活躍しておったようじゃの!
わしらとしても鼻が高いわ!!」
張角の居る場所からそう遠くない所でやっとあたしは孫堅軍に追い付いた。
ハッキリ言って、かなり苦労して他のモブ武将を倒した後だったんだけど、
黄蓋があんまり嬉しそうな顔をして迎えてくれるから思わずあたしも笑顔で返した。
「殿もおぬしには感心しておった、この調子で攻め潰せ!!」
「了解!」
返事と同時にあたしと黄蓋は張角目差して走り始めた。
「出でよ!!愚者に相応しい相手を授けよう!!」
「っ!!」
この黄巾の乱開始時と同じように、空から聞こえた張角の声。
そしてそれと同時に唐突に半透明の紫色をした無数の人影が、あたし達の目の前に現れた。
出た!!幻影兵!!
あたしは斬りかかって来る幻影兵の攻撃をかわしながら、
とにかくソイツらを極力無視して祭壇を目差した。
周りでは慌てふためきまくる味方の兵が、幻影兵相手に右往左往している。
何進が祭器破壊の指示を出した。
「孫堅様!!私が祭器を破壊して参ります!!」
「任せたぞ!!」
孫堅に向けて大きく首を縦に振り、あたしは祭壇の奥へ突っ込んだ。
ゲームそのままの大きな黄金色の祭器が、どう見ても怪しい光を発している。
祭器に灯されたゆらゆらしている炎は近寄ってもあんまり熱さというものを感じなかった。
あたしは思い切り槍を振りかざして、その1つを叩き割った。
祭器は粉々になったかと思うと、一瞬目を刺すくらいに光って、そのまんま消えてなくなってしまった。
さすがにもうこれ位じゃ驚いたりはしないけど。
「後3つっと!」
声に出してそう言って、目の前にわらわらと群がってくる黄巾兵をなぎ払う。
近くに拠点が2つもあんだから仕方ないのかもしれないけど、
あり得ない位の数の兵があたし目掛けて押し寄せて来ていた。
しかも、それプラス幻影兵。
無双ゲージはあっという間に溜まって、あたしはすぐにそれを解放した。
「、さすがだな!」
撃破数がまた賞賛される数に達したらしく、
いつの間にか傍に居た策がそう言ってあたしに声を掛けてくれた。
あたしはとりあえず策に向かって片手をあげて、ども!と返事をした。
何度も言うようだけど、やっぱりキャラに褒めてもらうと嬉しい。
4つ目の祭器を叩き壊した所で、現れた時と同じように紫色の幻影兵は唐突に消えた。
「邪術は我々が打ち破った!!張角を目差せ!!」
何進の大声が聞こえて、あたしは祭壇からそっちに目を移す。
・・・・・・打ち破ったのはあたしなんだけど・・・、ま、いっか・・・。
「、よくやってくれたな。あの幻影兵をものともしないとは、恐れ入ったぞ!」
「あっ・・・はい!有り難うございます!」
振り向くとすぐ傍に居た孫堅が誇らしげな瞳であたしを見つめて言った。
どんな武勲より、やっぱ殿の言葉が胸に沁みる。
とは言っても、これは『武人』的考えとは程遠くて、
どう考えてもミーハープレイヤー思考なんだけど。
「よ、ケリをつけるぞ!ついて来い!」
「はい!!」
あたしは大きく返事をすると、そのまま孫堅の後について張角の居る場所へ向かうことにした。
・・・んだけど、敵が多すぎて前に進めないという状態。
どうやら2つある拠点から止め処なく黄巾兵が溢れてるって状態らしい。
「むっ、これでは切りがないな。、其方の拠点は任せたぞ!
我らは反対側の拠点を押さえる!」
「分かりました!」
あたしの返事と同時に孫堅が頷いて、もう1つの拠点に馬を走らせた。
あたしはすぐさま拠点兵長を探し出し、とにかくソイツ1人を叩き伏せる。
もう時間をかけている暇はなかった。
と言うか、撃破数を伸ばす気もないから、さっさと終わらせるに限る。
なんたって、このすぐ後には張角が待ってるんだから。
[敵総大将、張角接近中。接触マデ10・・・9・・・]
槍がそう言ってカウントダウンを始めた。
いつの間にやらかなり至近距離に近付いていたらしい。
張角の居る場所に続く階段を駆け上る。
[・・・7・・・6・・・]
「・・・ヤバ・・・マジで怖い・・・・・・・・・・・・。」
ゴクリっと唾を呑み込んで、あたしは呟く。
気のせいなんかじゃなくて、掌に汗をかき始めていた。
バーチャルのくせにこういうとこだけはリアルだな・・・。
「!!わしらも行くぞ!!」
「こーいう楽しいことは分け合わねぇとな!」
「!黄蓋、策!」
あたしの両端に並ぶようにして2人は走って来てそう言った。
[3・・・2・・・]
あたしは槍をグッと握り直し、大きく息を吐き出した。
[・・・1・・・]
「行きますか!!!」
気合を入れて階段を上りきると、丁度そこでカウントダウンが終わった。
「蒼天の獣よ!!滅するがいい!!!」
張角が姿を見せてそう叫んだと同時に、あのゲームムービーそのままに、
あいつの前にボゥっと炎の輪っかが出来上がる。
隣に居た策が口笛を吹くとさも楽しそうに声を上げた。
「へっ!おもしれぇ!」
「うむ、若、虎の子のその力、存分に示してやりなされ!!
、わしらも若に続くのじゃ!」
「了解!!」
あたしはどう見ても怪しい動きで攻撃を繰り返している張角と、
それを取り巻く黄巾兵の群れに思いっきり突っ込んだ。
「この小娘がぁ!!蒼天の愚者の使いか!!ほぅっ!」
思ってた通り、183cm.もある張角のヤツが目の前に立ってあの杖を振り回す姿にはかなりビビった。
だけど、ここに居るのはあたしだけじゃなく、策や黄蓋もついていてくれる。
そう思うとビビる気持ちより、この乱を早く終わらせたい気持ちの方が大きくなっていた。
ざくざくと手に残る独特の感触、それと同時に何度か張角が声を上げる。
殆どの黄巾兵はもう人形に変わってしまっていた。
「天誅っ!!」
「っ!」
張角の杖の先から炎が吹き出して、傍に居た呉の兵士達に燃え移っていく。
反応が遅れたあたしの体にもそれが直撃し、あたしは咄嗟に声すら出せなかった。
文字通り焼け付くような熱さが体中を包んでるのに、服は焦げたりしてない。
そのくせ火があたしの上半身にまとわりついていた。
[ダメージレベル8]
「あーもー煩い!知らせてくれなくて結構!」
他の2人と一緒に夢中で張角に斬りこみつつ、あたしは槍に向かって言った。
それより前にかなり体力減らされてんのは、あたし自身が1番良く分かってる。
それを言葉にして言われると、へこみがより一層深くなるってもんだ。
[プレイヤー、体力ゲージ表示]
っ!ヤバ・・・、2分の1以下だし!!
「黄天よ、我に更なる力を・・・!!」
焦るあたしをよそに、張角がそう叫んだ。
あたしは急いで覚醒印使用を槍に指示した。
バリバリと電撃が体中を駆け巡るような感覚と一緒に、体が金色に光る。
それと同時にこの借り物のエディット武将の体に力がみなぎる感覚がモロに伝わってきた。
「はぁっ・・・!!!」
「ごはぁっ・・・!!ぬっ・・・!」
もう無我夢中で槍を張角の体に叩き付け、あたしは息つく事も忘れてチャージ攻撃を繰り返した。
「!止めを刺すんじゃ!!!!」
「分かった!!!」
黄蓋の声に大声で答えて、あたしは覚醒印が切れる直前に無双乱舞を発動した。
「うぬぁぁぁぁっ!!!!!」
張角が何とも言えない叫び声を上げ、そのままぶっ飛ばされたかと思うと、
地面を這いずる様に体を動かして最期の台詞を口にする。
「おお・・・我が魂は天へ・・・我が肉体は地へ・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
そのまま地面に張り付いて動かなくなった張角を、あたしはまた複雑な気分で見つめた。
初めて顔あり武将を、しかも『難しい』設定で倒した瞬間だった。
けど勿論、ちっとも嬉かないんだけど。
「よくやったな!!!俺らは殆ど援護したぐれぇだったぜ!」
「そうじゃ!!殿にも今の勇士、見えておったようじゃぞ!!」
2人があんまり喜ぶもんだから、落ち込む気分が少しは楽になった。
ま、この先いちいち落ち込んでたんじゃやってられないもんね・・・。
「邪教を広める逆賊は、我らが打ち破った!!!」
何進が声を上げて言った。
つまり、ステージクリアってことだ。
体から力が抜けそうになるのを必死で耐えて、あたしは張角の死体から遠ざかる。
その間に、槍が元の指輪に変化した。
武勲は今回の戦であたしがダントツ。
けど武勲なんかより、あたしの沈んだ気分を癒してくれるのは、
やっぱり皆からの言葉だったりする訳だ。
「!お前の今回の働き、俺も誇らしい気分だ!これからも頼りにしておるぞ!鬼姫よ!」
「あっ・・・・はい!!」
何はともあれ、黄巾の乱はこうして終わった。
色々痛い思いもしたけど、終わってみれば3国殿が揃った戦に出れたり、
桃園3兄弟に出会えたりとかなり美味しい状況だったと思う。
ま、堪能してる暇はなかったけど。
とにかく、後はこの先に備えてまたを鍛えないといけない。
それから例のアイテム。
爺さんからの情報(肝心な最後は聞いてないけど)を元に探さないとな・・・。
心の中でよっしゃと気合を入れ直し、あたしは孫堅と一緒に城へ戻ることにした。
(黄巾の乱・4 -終わり-)
後書き
やっと終わった・・・・・。長すぎだぞ、私。
次は策編だ、策編。
私としては10話の凌統と甘寧編も早く書きたいんですけど。
しつこいようですが、策編も黄巾の乱・2、3はこれと共通です。
サボってる訳じゃないんですが・・・ないんですが・・・
被りまくりな文章打つのもどうかなと思いまして。
では今回長々とお付き合い頂いて有り難うございました。
失礼致します。
ブラウザバック推奨