とうとう来てしまったんだ、この日が。
黄巾の乱が。
戦開始直前、あたしはゴクリと喉を鳴らした。
あの日爺さんから聞かされた『鬼姫』の称号のとんでもない事実。


この戦の難易度が『修羅』だったりしたら、
あたしはこの先も生き抜いてく自信がないんだけど・・・、本気で・・・。


それでもどうにか今日の戦を乗り切れば、覚醒印が3倍の威力を発揮するアイテムが(書物?)
手に入れられるらしいけど、肝心な所でいきなり回線が途切れてその後お爺さんと会話をしてない。


・・・・・・やるしかない・・・か・・・。


右手の指輪を外し、掌に乗せる。

「姜維・・・。」

カッ・・・


いつものように武将の名を呼ぶと指輪が眩く輝いて、
気付いた時にはあたしの手に姜維の槍『龍顎閃』が握られていた。

[戦闘開始、黄巾ノ乱、敵総大将、張角]

槍の柄の部分から機械音の声が言った。
それが終わるとすぐに聞こえる張角の声。

「怒るのだ!!黄巾の子らよ!怒りて蒼天を動かし、泰平の黄天を迎えるのだ!!」

空から降り注ぐみたいな言葉と同時に、オオオオオオとどこからか一般兵が大量にわき出てきた。
勿論、黄巾党の連中だ。
それにビビる暇なく何進が叫ぶ。

「曹操軍は東より賊軍を抜き、孫堅軍は西より抜け!!義勇軍は中央を抜き、他2軍と合流せよ!!」

あたしは指示されたとおり西に向かいながら、そこで思わずハッとした。

「・・・!曹操軍・・・義勇軍って・・・ことは・・・・。」


そうだ!生で曹操と桃園3兄弟が見られるってことだ!!!

ザッ・・・!!!

「っ!!」


気を抜いていたその瞬間に、背中に硬い金属の感触があった。
そしてザクッと衝撃が走り、あたしの体は地面に叩きつけられる。
あたしは慌てて体制を立て直し、武器を構え直した。

[ダメージレベル5]

「っ!?レベル5!?嘘だぁ!?一般兵が!?」

あたしはあんまり驚いて声に出して叫んだ。
今まで相手にしていた一般兵は大抵ダメージレベル1か2がいいとこ。
それが突然に約2倍。

キンッ・・・ガッ・・・

手にかかる感触が、明らかに今までと違う。
ムカつく位重い。
あくまでも、『一般兵にしては』だけど、それでも充分だ。


「やっ!!!!っはぁ!!!」

ワァァァ・・・


ここ最近がむしゃらにやりまくったスキルアップが功を奏したと自分自身の努力に感謝した。
そして現実世界でエディット武将の育成に励んだ自分自身にも感謝した。
確かに前回までの敵兵よりどう考えても格段強い。
だけどそれを捌くだけの力が、この『』にはついてた。


問題は張角だけど・・・それは先に進んで考えるしかないな・・・。
今目先の問題は・・・他の武将・・・。


一般兵がこのレベルなら副将はもっと上、そして勿論、その上に立つ武将はもっと強敵のはずだ。
そう考えるだけで、何とも言えない緊張感が走る。


・・・確か孫堅軍の居る場所には張曼成って奴が・・・。


「「「「「そぉれ!!」」」」


「っ!!やばっ!!」

ゴチャゴチャと考えている間に傍に固まっていた敵兵が1列に並んで空を飛んだ。
いつもならそれを簡単の受け止める事も可能なんだけど、今回レベルが並みじゃない。
こんなベタな一般兵の攻撃も、馬鹿に出来るもんじゃなかった。
あたしは素早く身を交わして、その攻撃を凌ぐ。


とにかく考えるのは後!!今はここの拠点潰しとこう!!


拠点を押さえない限りは敵兵は止め処なく溢れてくる。
今も私の目の前にはわらわらと黄色い群れが出来ていた。
それが全部人間なんだから堪ったもんじゃない。
拠点を潰さなければ、あたしはその分大量にバーチャル殺人を繰り返さないといけない訳だ。
どの道、拠点に辿り着くまでは彼らを倒していかないといけないんだけど。
元々それがこのゲームの主旨なんだし、それは仕方がないんだってのも分かる。
今回からはこのことで精神的に参ってぶっ倒れるなんてことやらかさないようにしなきゃいけないことも。


それでも割り切れたもんじゃなけどね・・・。


ワァァァ・・・・・・・


無双乱舞を発動し、そのお陰で数十人ほどの敵兵が一気に吹き飛ばされて動かない人形に変わった。
道が開けたところを走り出した瞬間に、後ろから賞賛の声。

「うむ、さすがだ!鬼姫よ!」

軽く振り返ってみれば、馬に乗った孫堅があたしを見て微笑んだ。
知らない間にたった今、あたしは50人斬りを突破したらしい。
あたしは笑みを返しながら頷いてそれに応えた。


・・・・・・・・駄目だ、人斬りに嫌悪しといて殿に褒められるとやっぱ普通に嬉しい・・・・。
顔が緩むもんな・・・・・・・。


ゲーム画面で褒められるのと、こうして戦場で直に褒められるのは全然違う。
当たり前だけど、こっちの方が『実感』がある。
その後すぐにあたしは拠点を潰し、張曼成の居る場所を目指した。

[敵武将、張曼成、接近中]

握った槍があたしの考えを読んだみたいにしてそう言った。
読んだみたいにして、と言うか、そうなんだけど。
気持ち悪い話になるけど、
どうやら戦闘中はエディット武将の思考回路と槍内の機械の一部分が接続された形になるらしい。
で、必要な情報はこっちに回してくれるって寸法。
バーチャルだから何だってありってのは分かるけど、あたしとしてはあんまり気分いいもんでもない。
確かにこういう場合、便利と言えば便利なんだけど。

[前方約1メートル、目標発見]


「女、覚悟してもらおう!!」
「それはこっちの台詞!!」

あたしは槍を振りかざし、他の敵兵と一緒に目の前に現れた張曼成を激しく攻撃する。
だけどさすがに今までの難易度とは動きが違う、速さも、重さも。
それでも相手のヒットポイントが確実に削れられていってることは、手元の槍があたしに映像で知らせてくれる。
あたしの視界の右上に、相手のゲージが見えるようになってるからだ。
丁度ゲーム画面と同じ感じで。

!!少しそこを退いておれぇい!!・・・むんっ!!!」
「っ!?黄蓋!?」

黄蓋の言葉にあたしは反射的に敵兵の傍を離れた。
その途端、彼の投げた爆弾がドンッと音を立てて爆発する。
周辺に居た大勢の敵兵と共に、張曼成もかなりの勢いでぶっとんだ。

「ぐはぁっ!!!」
、今じゃ!!そいつを討ち取れ!!!!」
「了解!!!援護感謝!!!!!」


ザッシュゥ・・・ザンッ・・・!


「グァッ・・・!!!これが・・・最後の戦になろうとは・・・。」


そう言い遺し、男がドッと音をたてて地面へ崩れ落ちた。
抜け殻の人形になった張曼成の身体から、ふわりとアイテムが浮かび上がって槍に吸い込まれる。
攻撃力が僅かに上昇するアイテムだった。


・・・複雑・・・、あんまり嬉しいって感じじゃないもんな・・・。


「ガッハッハ!さすがやりおるな、!見事な連携だったわぃ!」
「有り難う、黄蓋のおかげ。」
「よし、この調子で先を急ぐぞ!」
「了解!」

黄蓋に答え、あたしはまた走り出した。
張角に辿り着くまではまだ先がある。
どうやら不幸中の幸いで、これは多分『難しい』方の設定だったようだ。
それでも充分ヤバイけど、あたしには呉の仲間が居る。


いざとなったら策や孫堅様に頼ろう・・・。


どっちにしろ『黄巾の乱』を終わらせない限り、例のアイテムは手に入らないんだから。


(黄巾の乱・1 -2へ続く-)



後書き
続きものになった・・・。
これで策編は別にするつもりなんですが、かなり話がかぶるかと・・・。
そこは温かく見守って下さると・・・(苦笑)
因みに、3と4の設定が入り混じってるんですが、そこも気にしないで下さい。
3と4の公式設定資料集を交互に見てかいてるんで(笑)
では、今回ここまでお付き合い下さったお客様、誠に有り難うございます。
続きもお付き合い頂けることを願って、失礼致します。


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