「ほぉ、そなたが・・・異世界からの訪問者、か・・・。」
「っ!?ええ!?」
城に戻る途中、突然過ぎるほど突然に、その人物はあたしの目の前に現れた。
初めて見るその人は、老人にしては背がとても高く感じられた。
そう、無双世界では呂布にも優ると言われている仙人、『左元放』
だけど、そんなことよりあたしが驚いてんのは・・・。
「何であたしが・・・ここの世界の人間じゃないって・・・。」
「何を驚いているのかね?小生は仙人、この世界を第3の視点で見守る者。
そなたのことを知っていても何もおかしくはないはずだがね。」
あたしはジッと彼を見つめると、ただ頷くしかなかった。
確かに、それは言われてみれば最もなことではある。
だけど今まであたしの存在をそういう風に分かってくれた人はこの世界では1人もいなかった。
あたしはそれが当然で仕方のない事だと思ってた。
「よ、そなたは此処に来てまだ日も浅いようだが、随分と功を上げているね。
全てが慣れぬこの世界で本当に驚くほど良く働いている。
その腕、さすがは『鬼姫』の称号を持つ者だと言っておこうか。」
真っ白な顎髭を片手で撫でるように触れて左慈がそう言った。
あたしはそれに驚いて慌てて声を上げる。
「左慈も知らないの!?この称号が本当は何のか!」
「どういう意味だね?」
穏やかに聞き返す左慈に、あたしはうっと思わず詰まる。
だって、どう考えても説明するのも馬鹿らしい。
左慈は返事を待っているようだった。
あたしは仕方なく口を開いた。
「・・・『鬼姫』の称号は、このゲーム・・・この世界の創生者が、面白半分で取り入れたものだってこと。
1兆分の1の確率で出てくるはずの称号だったんだけど、
どう間違ったのかこの世界に来る第1号の私にそれがくっついてきてたって訳・・・。
だからここの皆が感心するほどのもんじゃないと思う・・・。」
あたしの話を静かに聞いていた左慈が、ふむ、と小さく頷いた。
「それ程の確率でありながら、称号はそなたの身に宿された・・・。
それこそに意味があると小生は思うだのだが。」
「・・・え?それってどう言う・・・・。」
「選ばれたのだよ、、そなたがこの世界に。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか!!」
いきなり話が飛びすぎた気がして、あたしは言った。
仙人ってのは本当に突然突拍子もない事を言い出す。
ま、だから仙人なのかもしれないけど。
「信じるも信じないもそなたの自由、よ、
小生がこのことについて答えられるのはこれまでだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・・・。」
半分頭を捻りながらも、あたしは返事をするしかなかった。
「それで・・・左慈はどうしてあたしに会いに来たの?」
「この世界を収めることとなるかもしれない異世界からの訪問者をひと目みておきたかったのだよ。
大徳の劉玄徳の元でもなく、奸雄曹孟徳の元でもない、
江東の虎と呼ばれたあの男の元へ身を寄せているそなたをね。」
それはどこか皮肉に聞こえない事もなかった、
だけど左慈を見る限りじゃ特別そんな風でもない。
「天下を統一しなきゃあたしは帰れない。だからあたしは絶対やり遂げる、呉の仲間と一緒に。」
あたしは一呼吸置いてから、半分自分に言聞かせるみたいにしてそう言った。
左慈はそんなあたしの顔をまじまじ見下ろしている。
「ふむ、そなたにとってはその身に関る重大な事柄。
それしか道がないのならば、やり遂げるしかないのだろう・・・。
そなたももう分かっているとは思うが、小生は大徳の世を望んでいる。
そなたが劉玄徳の元に身を寄せていれば惜しみなくその助力を与える事も出来たのだがね・・・。」
「・・・・・・・確かに劉備・・・様は・・・理想的な人だと思う・・・、だけど・・・あたしは呉から動くつもりはないから。」
左慈の何でも見透かしてしまいそうな瞳を真っ直ぐ見つめ返して、あたしは答えた。
そう、これは心から思ってること。
あたしが呉に来て数週間、ずっとあたしを支えてきてくれたのは他でもない、呉の皆だ。
確かに呉以外の勢力のキャラも好きだけど、
もうそんな感情じゃ測れないものがあたしの中には生まれてる。
何より、呉に来たことはきっと偶然じゃないと思えるから、あたしはあそこを動かない。
皆を裏切るような真似は絶対出来ない。
「よ、異世界からの訪問者よ、そなたの気持ちは良く分かった。
小生は暫し影からそなたを見守ることとしよう。」
そう言って、消えてしまおうとする左慈をあたしは咄嗟に大声で引き止めた。
「あ、待って!!もう1つだけ聞かせて!」
「・・・何かね?」
振り向いた左慈に、あたしは小さく深呼吸をして訊ねる。
「・・・この世界は・・・あたしにとって・・・現実じゃないの・・・。
この身体も借り物だし、本当は当たり前だけど、戦いなんか全く知らないし・・・。
それにこの世界の人たちだってあたしにとっては・・・失礼な言い方だけど『作り物』で・・・。」
今から口にする言葉を考えると、何だか変に緊張して少しだけ汗をかいた。
いつも思うけど、バーチャルのクセにこんなとこはホントにリアルだ。
「・・・それなのに・・・この世界で・・・恋・・・に・・・
似たような気持ちを持つことって・・・・・・・・・あると思う・・・・?」
言葉を暈してしまったのは怖いからだった。
ついさっきまで天下統一だ何だと真面目な話をしてたのに、
今口にしてるこれはそれとは程遠い。
それに左慈にしてみれば下らない事だと思う。
だけど左慈があたしが一体どこから来たのか分かってくれているんだと思った時から、
そして彼が『仙人』ってことも含めて、聞かずにはいられなかった。
多分、誰かに聞いて欲しかったんだと思う。
「よ、そなたはこの世界が現実ではなく、そなた自身の身体も借り物だと言う・・・・、
だがよく考えてみればどうかね?
今その思いを抱き、そして悩んでいるのはそなたのその心ではないのかね?
それが作り物ではないことはそなた自身がよく分かっているはずだ。
我々のこの世界はそなたの視点から見れば『作り物』だろう、だが小生たちは確かにここに生きている。
各々の人格を持ち、誇りを持ち、夢を追い、生活しているのだ。
それをそなたの中で恐らく唯一『現実』だと認識している心で感じているのなら、
この世界の者に想いを寄せてしまうこともあるだろう・・・。」
「・・・・・・・・・・・・左慈・・・・・・・・・・・・・。」
感じているのはあたしの心・・・、
全部がバーチャルのこの世界で・・・たった一つのあたしの現実・・・。
分かってたはずの事が、今まで全然分かってなかったんだと思い知らされた気分だった。
「さてと、では今度こそ小生は行く。よ、また機会があれば会う事もあるだろう。
小生はその時までにその迷いに何らかの答えが出るように祈っているとしよう。」
「・・・はい・・・!」
左慈はあたしの返事に頷くと、またフッと出てきた時と同じように突然消えてしまった。
・・・・・・・仙人様に会えたこと、感謝しなくちゃね・・・・。
あたしはまた城に戻る道に向かいながら、心の中でそう呟いた。
(仙人の助言 -終わり-)
後書き
左慈爺ちゃんを書いて・・・む・・・難しかったです・・・。
口調とか性格とか掴んでないくせに出してみた。
とりあえずこの世界で唯一ヒロインの素性をしるキャラってことで。
無双はキャラが48(?)も居るからオールと言うのは、
かなり難しいんですが、出せるとこまで(書ける範囲内で)出してみたいです。
では、今回はここまで読んで下さって有り難うございました。失礼します。
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