「よぉ!!どこに行っちまったかと思えば、お前随分活躍してたじゃねぇか!!」
孫堅軍にどうにか追いついたあたしにそう言って、策はあたしの頭をクシャクシャとかき混ぜた。
あたしは思わずへへっと笑顔を零しながら、辺りをキョロキョロと見回した。
「あれ?ねぇ、策、大喬は?」
「あ?ああ、アイツは1歩手前の拠点守って貰ってる。
さすがに張角の居る場所までは危険で出せねぇと思ってな。」
そっか、と頷いて、あたし達は張角の居る場所目差してまた移動を始めた。
「、この先もお前の力、頼りにしてるぜ!」
「了解、了解!」
策と並んで走りながら、あたしは答えた。
「出でよ!!愚者に相応しい相手を授けよう!!」
「っ!!」
そこで不意に、この黄巾の乱開始時と同じように空から聞こえた張角の声。
そしてそれと同時に唐突に半透明の紫色をした無数の人影が、あたし達の目の前に現れた。
「うわっ!何だぁ!?こいつら!っ!?
向こうの攻撃は当たるくせに俺らの攻撃は全く通用しねぇぜ!」
「策!そいつら相手にしても無駄だよ!幻影なんだから!」
あたしは斬りかかって来る幻影兵の攻撃をかわしながら、
とにかくソイツらを極力無視して祭壇を目差した。
周りでは慌てふためきまくる味方の兵が、幻影兵相手に右往左往している。
何進が祭器破壊の指示を出した。
傍で剣を振るっていた孫堅が、あたしに大声で言った。
「!お前に祭器の破壊を頼めるか!?」
「はい!!行って参ります!」
孫堅に向けて大きく首を縦に振り、あたしは祭壇の奥へ突っ込んだ。
ゲームそのままの大きな黄金色の祭器が、どう見ても怪しい光を発している。
祭器に灯されたゆらゆらしている炎は近寄ってもあんまり熱さというものを感じなかった。
あたしは思い切り槍を振りかざして、その1つを叩き割った。
祭器は粉々になったかと思うと、一瞬目を刺すくらいに光って、そのまんま消えてなくなってしまった。
さすがにもうこれ位じゃ驚いたりはしないけど。
それから順調に他3つも叩き割って、あたしは策たちの居る場所へもどることにした。
「邪術は打ち破った!」と言う例の何進の声が聞こえる。
「お前凄ぇな!あの訳分かんねぇ幻影兵をアッという間に見破っちまうとはよ!」
「え?ははは・・・、そんなことないよ。」
ゲームで流れを抑えてるだけ、なんてことは口が裂けても言えない・・・。
その後もわらわらと敵兵が湧き出てくるのは、傍の2つの拠点のせいだ。
先にあの2つを潰してしまわないことには張角を倒す前にあたしの体力がもたない。
何せ一般兵のレベルが今までの難易度の時の敵武将より上なんだから。
「策、!其方の拠点を潰すのだ!!我らは反対側を攻め潰す!!」
「おぅ!!親父!押し込もう!!」
「孫堅様!了解です!」
あたしと策の返事と同時に孫堅が頷いて、もう1つの拠点に馬を走らせた。
あたしは策と一緒に拠点兵長を見つけ出し、ソイツ1人を先に叩き伏せる。
撃破数なんか伸ばすつもりは勿論全くありゃしなかった。
「策!!あたしは張角のとこに行くから!」
「馬鹿野郎、だったら俺も一緒に行くぜ!」
「あははっ、だね!」
こんな時なのに思わず笑ってしまうのは、やっぱ策が居てくれるからだ。
[敵総大将、張角接近中。接触マデ10・・・9・・・]
不意に槍がそう言ってカウントダウンを始めた。
いつの間にやらかなり至近距離に近付いていたらしい。
張角の居る場所に続く階段を駆け上る。
「策・・・気を引き締めていこうね・・・。」
ゴクっと唾を飲み込んで、自分に言聞かせるはずの言葉を策に言った。
隣の策が軽く頷く。
「おぅ!そんなに固まるなって!俺も親父も、それに黄蓋だってついてんだ!」
覇王を構えて彼は私達の後ろで敵兵と戦っている二人を見た。
[・・・7・・・6・・・]
「・・・・・・うん!」
策の一言で張角との戦い直前になって、気持ちがスゥーっと落ち着いていく。
[3・・・2・・・]
「策!!!!黄蓋!!行くぞ!民を惑わす愚か者を我々で狩ってくれよう!!」
[・・・1・・・]
「はい!!!」「おぅ!」「はっ!!」
3人同時に返事をした所でカウントダウンが終わる。
それと殆ど重なる形で張角が声を上げた。
「蒼天の獣よ!!滅するがいい!!!」
そう叫んだと同時に、あのゲームムービーそのままにあいつの前にボゥっと炎の輪っかが出来上がる。
隣に居た策が口笛を吹くとさも楽しそうに声を上げた。
「へっ!おもしれぇ!」
「策、我が猛る虎の子よ!!その力共に見せ付けるぞ!!!」
「うむ!、わしらも殿達に続くのじゃ!!」
「了解!」
さすがに難易度が高いだけはある、
張角は怪しげな動きでどんどん呉軍の兵を一掃していった。
あの炎技、あり得ない威力と攻撃範囲。
「ほぅっ!!えええいっ!!」
甲高い裏声は間抜けにも聞こえるんだけど、その凄さが凄さだから笑ってる場合じゃない。
勿論、そんな余裕なんか全くない。
こっちはこっちで奴の動きをさけながら、
周りの黄巾兵をとにかく捌いて張角1人を狙える状態にしようと頑張ってるところだ。
拠点は潰したし、粗方は周りに居る他の軍が片付けてくれてる。
黄巾兵の数は確実に減って行った。
あたし達の足元には、無数に地面に張り付く黄色い人形の姿がある。
「天誅っ!!」
「っ!」
張角の杖の先から炎が吹き出して、傍に居た呉の兵士達に燃え移っていく。
反応が遅れたあたしの体にもそれが直撃し、あたしは咄嗟に声すら出せなかった。
文字通り焼け付くような熱さが体中を包んでるのに、服は焦げたりしてない。
そのくせ火があたしの上半身にまとわりついていた
「!!大丈夫か!?」
「あ、策、うん!どうにか・・・!」
[ダメージレベル8]
ああーー煩い!!!
張角に狙いを定めて殆ど袋叩きに近い状態にしながら、
あたしは心の中で槍にそう怒鳴った。
体力がどの位ヤバイ状態なのか、そんなのあたし自身良くわかってるつもりだ。
「黄天よ、我に更なる力を・・・!!」
焦るあたしをよそに、張角がそう叫んだ。
あたしは急いで覚醒印使用を槍に指示した。
バリバリと電撃が体中を駆け巡るような感覚と一緒に、体が金色に光る。
それと同時にこの借り物のエディット武将の体に力がみなぎる感覚がモロに伝わってきた。
「はぁっ・・・!!!」
「ごはぁっ・・・!!ぬっ・・・!」
もう無我夢中で槍を張角の体に叩き付け、あたしは息つく事も忘れてチャージ攻撃を繰り返した。
[プレイヤー体力ゲージ表示]
「っ!!最悪っ・・・!」
どうみてもそれは2分の1以下だった。
「天誅っ!!!」
張角の奴がまたしても苦し紛れに真・無双乱舞を繰り出す。
炎の大きさも威力もあり得ない。
「!!」
「策!?」
あたしを横に突き飛ばすように飛び出して来た策がかばってくれた。
そのお陰で間一髪、あたしは炎の直撃を避ける事が出来た。
だけど・・・・・・。
「策!!!」
「これっぐれぇどうってことねぇ!!鬼姫!!そいつに止めをさすんだ!!」
「はい!!」
策の声に大声で答えて、あたしは覚醒印が切れる直前に無双乱舞を発動した。
「うぬぁぁぁぁっ!!!!!」
張角が何とも言えない叫び声を上げ、そのままぶっ飛ばされたかと思うと、
地面を這いずる様に体を動かして最期の台詞を口にする。
「おお・・・我が魂は天へ・・・我が肉体は地へ・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
そのまま地面に張り付いて動かなくなった張角を、あたしはまた複雑な気分で見つめた。
初めて顔あり武将を、しかも『難しい』設定で倒した瞬間だった。
成し遂げた感は勿論あるけど、それでも手放しで喜べる気分じゃない。
あたしは急いで策の方に駆け寄った。
「策!!ごめんっ!あたしが避けるの遅かったから・・・!」
「ははっ、んな顔するなよ。俺はこの位平気だぜ。さっきも言っただろ。
それより、よくやったな!!敵の総大将倒しちまうなんてさすがだぜ!」
「策と皆のおかげだよ。」
「邪教を広める逆賊は、我らが打ち破った!!!」
あたし達の後ろで何進が声を上げて言った。
つまり、ステージクリアってことだ。
「謙遜すんなって、お前が活躍して今日の戦で俺たち孫呉の名を知らしめてやれたんだ!」
策は片手であたしの頭を自分の胸に軽く押し当てて、クシャクシャとかき回した。
あたしは驚いて顔を真っ赤にしてたんだけど、当の本人はそんなものお構いなし。
嬉しそうに笑ってる。
そして顔を上げると、じゃ、また後でなと言ってあたしの傍から離れた。
あたしは無意識に今策が触れたばかりの頭へ手をやる。
・・・・・・・ねぇ策・・・・・あたし分かった・・・・・・・分かっちゃったよ・・・・・・・・。
本当は認めたくなかったし、気付きたくもなかった。
出来るもんなら知らないふりしてたかった。
だってここはバーチャルで、現実世界とは程遠い場所で。
そうやって言い訳して、見ないふりしてればどうにかなるとも思ってた。
何より、そんなこと考えるよりもっと大事な事があるから。
けど、結局こうして思い知る。
策・・・あたし、あんたが好きなんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
だからさ、大喬の事が・・・羨ましかったんだよね・・・。
あたしは大喬の居るところへ戻っている策の背中を見つめながら、
心の中で今までの棘の正体を告白する。
バーチャルなくせに、こういう胸の痛みは嫌んなる位リアルだ。
とにかく・・・手始めに爺さんからの情報(肝心な最後は聞いてないけど)を元に例のアイテム探さないとな・・・。
目的をもう一度自分で確認すると、あたしは城に戻る為に歩き出した。
こうして、色々な意味であたしの胸に焼き付いた『黄巾の乱』は幕を閉じた。
(黄巾の乱・4 孫策編-終わり-)
後書き
ええー被りまくりの文章書きたくないから2.3共通のつもりが・・・、
何気に1も4も被ってる部分多くて誠に申し訳ありません。
策編はとりあえずラストにヒロインが気持ちに気付くと言う所を書きたくて・・・。
次は9.5話と称して共通シナリオ左慈を出します。そしてやっとまた分岐です。
では、今回ここまでのお付き合い、誠に有り難うございます!
失礼致します。
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