とうとう、黄巾の乱が始まる。
爺さんから聞かされた称号のあり得ないあの話。
ハッキリ言って最悪としか言いようがないんだけど、
今はそんなことを気にしてる場合じゃない。
大きく深呼吸してあたしは手元の指輪をいつものように姜維の武器、『龍顎閃』に変化させた。
その途端、手元の槍が機会音であたしに告げる。
[戦闘開始、黄巾ノ乱、敵総大将、張角]
それが終わるとすぐに聞こえる張角の声。
「怒るのだ!!黄巾の子らよ!怒りて蒼天を動かし、泰平の黄天を迎えるのだ!!」
空から降り注ぐみたいな言葉と同時に、オオオオオオとどこからか一般兵が大量にわき出てきた。
勿論、黄巾党の連中だ。
それにビビる暇なく何進が叫ぶ。
「曹操軍は東より賊軍を抜き、孫堅軍は西より抜け!!義勇軍は中央を抜き、他2軍と合流せよ!!」
ゲームとほとんど変わらない展開に、気後れしそうになりながらもあたしは走り始めた。
と、そこで後ろから誰かにポンっと肩を叩かれる。
振り向くと、何故だかやけにワクワクした顔の策が居た。
「よ!とうとう始まっちまったな!」
「だね・・・、ってか策は何か嬉しそうに見えるんだけど・・・。」
「そうか?俺はいつもこんな感じだけどな。それに今回の戦は民相手だぜ?
さすがに楽しい戦いって訳にゃいかねぇぜ。」
そう言ってる割に向かってくる敵を捌く姿も楽しそうに見えるのは、
元々策が戦うこと自体好きってことと関係してるのかもしれない。
けど、ま、策の言うとおり、いくら何でも一般人相手の戦は喜ばしいものじゃないだろう。
あたしはその一般人にさえ対抗できるか今激しく疑問なとこだけど。
「!よそ見してんな!!」
「えっ!?」
ザッ・・・・
背中に突然感じた硬くて冷たい金属の感触、
息が止まりそうな圧迫感があったと思ったその途端、
あたしの体は思いっきり地面に叩きつけられた。
ズザザっと体が地面を擦って、土煙が上がる。
[ダメージレベル5]
「っ!?ダメっ・・・5ぉぉ!?」
急いで起き上がって武器を構えながら、手元から聞こえたその情報にビビリまくって声を上げる。
策があたしの傍まで走って来ると、周りの敵を見事に掃除してくれた。
「おい、、大丈夫か!?相手が民だった奴らだからって油断すんじゃねぇぜ!」
「う、うん!有り難う、策!」
油断どころかメチャクチャ気ぃ張ってたんだけど、まさかここまでなんて・・・。
覚悟してたつもりでも、まさか一般兵が今までの2倍以上もダメージ与えてくるなんて思いもしなかった。
これは一時も気を抜いてる場合じゃない。
心の中で1人、喝を入れていると、不意に少し離れた場所から策を呼ぶ声がした。
「孫策様!」
「・・・・・あ・・・・・・・・。」
必死で名を呼びながら、その声の主、大喬がこっちに向かって走ってくる。
今日の戦、彼女の出陣予定はなかったはずだ。
「孫策様っ・・・が・・・・頑張って下さいっ!」
「なんだぁ!?お前・・・何でこんなところに・・・?」
慌てて大喬に駆け寄った策が言った。
そこで、あたしはゲームで見た黄巾の乱の大喬伝のムービーを思い出す。
つまり、これはあの時のムービーをそのまんま再現してるって訳だ。
「え・・・あの・・・孫策様の戦うお姿を見に・・・・。」
「しゃあねぇなぁ・・・。俺の後ろで隠れてろよ。」
嬉しそうに頷く大喬の頭を、策が軽く撫でている。
こんなシーンはムービーにはなかったけど、
何だかそれもこの夫婦っぽいなと思わせるとこが凄い。
チクチクと例の棘がまた疼き出すのを無視して、あたしは大喬の肩をぽんっと軽く叩いた。
「さすが小覇王の嫁!旦那の勇士を見に戦場に来るなんてね、大喬!」
「そんなっ・・・さんっ!」
照れて赤い顔をしている彼女に向かって、敵兵が数人武器を振り回している。
あたしは咄嗟に槍でそいつ等を一気に弾き飛ばした。
「きゃっ・・・!」
「悪い、!助かったぜ!」
「何の!策だけじゃなくてあたしのことも頼りにしてよね?」
「あ、はい!わたしも足手まといにならないよう、頑張ります!」
あたしは大喬に頷いて答えると、
またもや襲い掛かってくる黄巾兵に向かって得物を振り上げた。
ウワァァ・・・
伊達にここ数日この戦の為に『』さんを鍛えてた訳じゃないって!
確かに、一般兵とは言え、手応えは今までとまさに段違い。
だけど、あたしのエディット武将にはそれを乗り切るだけの力が充分ついてる。
ついさっきまでただただ不安だったけど、気を抜かなけりゃどうにかなるって自信がついてきた。
傍には策も居てくれるしね。
チラリと向けたあたしの視線に気付いた策が、おぅ!とばかりに笑ってみせてくれた。
そういう事さえ嬉しくて、あたしの戦での不安ってやつを少しずつ剥ぎ取ってくれる。
策の汗臭そうで無邪気な感じの笑顔には、
そういう不思議な力があるんだと最近本当に実感するようになった。
うっしゃ!んじゃ、まずは手始めに・・・
「!大喬!あの拠点、俺たちで潰してやろうぜ!」
「はい!孫策様!」
「了解!」
策の判断は正しい。
ゲームと一緒で拠点を潰さない限りは黄巾兵が次から次へと湧き出てくることになるから。
いくらバーチャルとはいえ、大量殺人はごめん被りたいところ。
こんなとこで手間取ってるわけにもいかない。
それに、私は今ここで無双の『一騎当千爽快アクション』繰り広げる気はさらさらない。
精神的ダメージを抑える為にも犠牲は最小限にってこと。
またぶっ倒れてこの夫婦に迷惑かける訳にもいかないし。
そうやって気を遣ってる割に撃破数は結構いってしまったりする訳だけど。
策と大喬が拠点の周りの兵を一掃してくれている内に、あたしは拠点兵長の撃破をやってのけた。
「よっしゃ!さすがに連携だと早いぜ!」
「策、あたしはあの張曼成って武将を叩くから!」
「でしたらわたしもお手伝いします!」
「おぅ!どうせこの辺は片付けていかなきゃいけねぇんだ、俺も手伝ってやるぜ。」
3人同時に頷いて、張曼成を目差す。
とりあえず妖術が発動する前にアイツを倒しておかないと、後が厄介だ。
と言っても、今回は難易度が前回と段違いだから、心していかないとヤバイかもしれない。
[敵武将、張曼成、接近中]
握った槍が突然あたしの考えを読んだみたいにしてそう言った。
読んだみたいにして、と言うか、そうなんだけど。
気持ち悪い話になるけど、
どうやら戦闘中はエディット武将の思考回路と槍内の機械の一部分が接続された形になるらしい。
で、必要な情報はこっちに回してくれるって寸法。
バーチャルだから何だってありってのは分かるけど、あたしとしてはあんまり気分いいもんでもない。
確かにこういう場合、便利と言えば便利なんだけど。
[前方約1メートル、目標発見]
「その首、頂戴する!!」
わらわらと群がるみたいに現れる黄巾兵に混じって張曼成が声高に叫んだ。
あたしは素早く奴の懐に飛び込んで、まず最初の一撃を食らわしてやる。
「ヒュゥッ!さすがだな、!よっしゃ、俺もやってやるか!」
策はそう言ってあたしの周りの敵兵を数十人くらい思い切りぶっ飛ばした。
周りがスッキリしたところで私と大喬が張曼成目掛けて激しく攻撃する。
時々奴から繰り出される攻撃は、思った通り、
今までの戦いで感じた中では1番の鋭さと重みを放っていた。
これは策たちなしじゃ絶対苦戦したな・・・。
改めて2人に感謝しつつも、あたしは攻撃の手を休めなかった。
「っはぁぁっ!!!」
ザシュゥ・・・
「グァッ・・・これが・・・最後の戦になろうとは・・・・。」
そう言い遺し、男がドッと音をたてて地面へ崩れ落ちた。
抜け殻の人形になった張曼成の身体から、ふわりとアイテムが浮かび上がって槍に吸い込まれる。
攻撃力が僅かに上昇するアイテムだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
複雑な気分でそれを眺めていると、策が突然にポンポンっとあたしの肩を叩いてきた。
「お前の気持ちは分かるぜ、けど、これが戦ってヤツだ・・・。
親父達と一緒に、こんな戦い始めさせた張角ってヤツをぶっ倒してやろうぜ!」
策たちバーチャル無双キャラには槍の声も、そしてアイテムも目にする事は出来ない。
だけど、彼は私がこうやって武将や敵兵を倒す度に感じる精神的ダメージに気が付いてくれてるみたいだった。
それだけで、どこか救われる気分になった。
「有り難う、策。」
頷いて笑顔を向けると、策も笑顔で返してくれた。
「礼なんか言うなって、助け合うのは当然だろ!お前にゃ俺も何度も世話になってからなぁ!」
戦場に策の笑顔があるだけで、あたしの勇気が思いがけなく膨らんだりする。
張角と戦うまで、まだまだ先がある。
どうやら不幸中の幸いで、これは多分『難しい』方の設定だったようだ。
それでも充分ヤバイけど、あたしには呉の仲間、策や大喬が居る。
ゲーム画面と決定的に違うこと。
あたしから助けを求めれば、彼らは絶対支えてくれるって事。
うし!!張角戦は策たちの力も借りて頑張ろう!!
例のアイテムを手に入れる為にも、『黄巾の乱』を終わらせる。
策達呉の仲間と一緒に。
(黄巾の乱・1 孫策編 -2へ続く-)
後書き
久々に更新致しました。
何気に共通シナリオと被ってる部分もありますがご容赦を。
しかも2と3は共通シナリオそのまんま使用ですが、
これまたご容赦を・・・(2は黄蓋との会話部分だけ修正します)
では、ここまで読んで下さったお客様!誠に有り難うございます。
失礼致します。
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