「なっ、何でおめぇがこんなとこに居やがんだ!?!」
甘寧は今紹介されたばかりの新しく呉軍に迎え入れられたと言う将を目の前にしてそう声を上げた。
彼の予想通りとも言える反応に、彼女は思わずその艶のある唇に笑みを浮かべる。
「呂蒙殿の話を聞いてなかった訳じゃないでしょう?
私も今日からここにお世話になることになったのよ。」
「なっなっなにぃぃ!!??」
「まったく、久し振りだって言うのに随分な態度じゃない、甘寧。」
そう言うと彼女は再び嬉しそうに微笑んだ。
久し振り、などと言う言葉で済ませるにはあまりに長い間彼女らは互いに顔を合わせて居なかった。
彼らが顔を合わすのは、甘寧が賊軍、錦帆賊の頭を止めて以来だ。
「『鈴の甘寧の傍には常に幻惑の蝶が舞っている』
そう言われてたこと、あんただって忘れた訳じゃないでしょ?」
「・・・いや・・・、確かにそう言われてた事もあったけどよ・・・何でまたオメェ・・・。」
喜びを全面に押し出すような彼女に対し、甘寧は歯切れ悪く答える。
いつも豪快でハッキリと物を言う彼とはまるで別人の様だった。
「・・・嬉しくない訳・・・?折角こうして会えたのに・・・。」
彼女はそんな甘寧の態度に、先ほどまでの笑顔を少し曇らせた。
「そうじゃねぇが!・・・俺が言いてぇのは・・・!」
「よぅ!!!話込んでるとこ悪ぃな!!」
甘寧が彼女の言葉に答えようとしたその時、2人にまた別の人物が声を掛けてきた。
この呉軍の君主、孫堅の長男である孫策だ。
は素早く姿勢を整え、彼に向かって頭を下げた。
「孫策様、・・・これからどうぞ宜しくお願いします。」
「おう!こっちこそ宜しく頼むぜ!ま、堅っ苦しい挨拶は抜きだ。
所でお前ら、知り合いだったのか?ったく、お前も隅におけねぇな、甘寧!」
孫策は甘寧とを見比べながらニヤリと笑った。
「おいおいおい、策の旦那、そりゃあ勘違いもいいとこだぜ!
こいつは俺が昔やってた賊軍時代の仲間だ。そんなんじゃねぇよ!」
必要以上にムキになる甘寧に、は思わず眉間にしわを寄せる。
「そこまで力いっぱい否定すること無いじゃないの、失礼だわ。」
「あん!?俺は本当の事しか言ってねぇんだよ!」
気丈な態度の、そして半分喧嘩腰の甘寧。
2人のやりとりを傍で見ていた孫策は笑いながら口を開いた。
「ははっ!ま、お前らの関係はだいたい良く分かったぜ。喧嘩するほど仲がいいってな!
・・・・で、まぁそれはそれとして、甘寧の下に居たってこた腕は確かなんだろ?。」
孫策はそう言ってを真っ直ぐと見つめた。
は彼に向き直り、ハッキリと首を縦に振る。
「甘寧の右腕を務めていました。女だとは言え、殿方にも遅れは取りません!」
彼女の自信に満ちたその台詞に、横で見ていた甘寧は一瞬昔の彼女を思い出す。
変わっちゃいねぇな、そう言う気の強ぇ所も・・・。
「よっしゃ!気に入った!!俺の妹もお前を気に入ると思うぜ、!
あいつもその辺の男にゃ負けねぇ位に戦場に慣れてるからな!」
「有り難うございます。」
「うんじゃあ、早速で悪ぃんだが、明日の戦、出てくれねぇか?」
「!?策の旦那!?」
突然の孫策の申し出に、が返事をするより早く甘寧が声を上げた。
「こいつぁ確かに腕は立つ、けど、幾らなんでも早速出陣させるこたねぇだろ!?」
「甘寧!?これは孫策様が私におっしゃって下さってる事で、あんたが決めることじゃないわ。」
甘寧の言葉にが静かに、だがキッパリと言った。
「ま、そうゆこった!で、、どうだ?」
「はい、私もご一緒させて下さい。必ず孫呉のお役に立てます様、全力で戦います!」
「よく言った!!!頼んだぜ!後でちょいと話し合いがあるから甘寧と会議室まで来てくれや。」
孫策は不満そうに顔をしかめたままの甘寧に目を移し、そして彼の肩を豪快にバシバシと叩いた。
「おい、甘寧、いつまでもそんなしけた面してんじゃねぇぜ!
お前の右腕だった程の女だろ!!信じてやれよ!」
孫策の馬鹿力に、さすがの甘寧もゲホゲホとむせる。
「ぐわ!・・・ったく、策の旦那にゃ敵わねぇぜ!!
おう、!オメェも出るからにはバシッと決めろよ!」
「言われなくてもそのつもりよ。」
は甘寧のその台詞を聞き、再び口元に笑みを浮かべた。
孫策はそれを見て満足そうに頷く。
「俺の用は済んだ。また後でな!」
「おう!」
「はい、孫策様。」
孫策がその場から去った後、2人は食事をすることにした。
食堂までの長い廊下を2人は並んで歩く。
が歩く度、彼女のスカートに深く入ったスリットから、スラリとした脚が太もも付近まで見え隠れする。
そしてその彼女の太ももには美しい蝶が一匹、描かれていた。
そう、蝶の刺青が。
その刺青がより一層美しく見える瞬間を、甘寧はよく知っていた。
戦場で敵と戦う彼女の姿、そして舞う様に動く蝶の刺青。
それが彼女が『幻惑の蝶』と言われていた所以だ。
そして彼女の背中にその太腿の蝶と同じものが彫られている事も、
甘寧は賊を止めると決心したその日の夜に知った。
「おい、、オメェんとこのクソ親父はここに来る事反対しやがらなかったのかよ?」
「・・・・・・・・父は死んだわ・・・。」
「!!!???何!?」
「・・・流行り病であっけなく・・・。」
彼女はそう言い、足を止めて腰に付いている小さな袋の中に手を入れて何かを取り出した。
そしてそれを甘寧に差し出す。
「手を出して、甘寧。」
「??んだぁ?」
「いいから、出しなさい。」
甘寧は訳が分からず彼女に言われるまま、の差し出す物を受取った。
コロコロ・・・ン・・・
彼に手渡されたのは小さく哀しげな音のする金色の鈴だった。
彼がいつも腰に付けている鈴よりは一回りほど小さい。
「おい・・・、こりゃあ・・・。」
「父が昔、あんたに貰った鈴。これをあんたに返して欲しいって・・・死に際に。」
「・・・・・・・・・・・あのクソ親父が・・・・・。」
甘寧はその呟きと共に、その鈴をぎゅっと握り締めた。
「・・・しんみりするなんてあんたらしく無いわよ、
・・・・・・・父もあんたが暴れてる姿が好きだったしね。その方がずっと弔いになるわ。」
「・・・おう!!!そうだな!、この鈴の甘寧、明日は存分に暴れてやるぜ!!!」
甘寧は握り締めていたその鈴を、高々と掲げて叫んだ。
は彼に笑顔で応え、そして2人は再び食堂へと歩き出した。
甘寧はこの時気付いていなかったが、
の足首にもまた、小さな鈴が付いていたのだった。
(甘寧編 再会-終-)
後書き
初めて書いた無双夢(?)
呉は好きキャラが沢山居て本当にずっと前から書きたかったですけど、
テニドリに手を取られてなかなか踏み出せなかった。
甘寧も凌統も、そして2人の喧嘩する姿も好きです。
もちろん仲のいい友情ッ気たっぷりなとこもですが。
更新速度は遅いかもしれませんけど、これからも頑張りますので宜しくお願いいたします。
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