「やっぱり、何度見ても不思議な光景だわ・・・。」

軍議を終えたばかりの馬超が会議室となった扉の前で数人の武将と何事か言葉を交わし、
戻ってきたその刹那、は半ば独り言に近い声音で呟いた。

「・・・ん?か、何の話だ?」
「今、馬超、陸遜と秀吉と話してたでしょ?何だかそれが未だに見慣れなくて。
いつ見ても不思議な光景だなーってさ。」
「ははは、そうだな、確かに俺も未だに慣れん。」

上げられた笑い声と相反し、何処か苦笑染みた表情を浮かべて彼は答えた。
そして不意に、馬超は瞳を僅かに細める。

「ここの者達との生活は悪くはない。皆、遠呂智討伐に全力で取り組んでいるからな。
・・・・・・・・・・・だがやはり・・・そんな中でも、俺の居場所はここではないと、時折強く感じることがある・・・。」
「馬超・・・。」

彼の横顔。
その瞳と表情に、寂しさにも似た複雑な翳りが宿る。
は暫くの間その横顔をジッと見つめた後、努めて明るい声で言った。

「今日は気分転換に少し外に出てみない?わたしも付き合うわ。
って言うかさ、わたしが付き合って欲しいんだけど。」

行ってくれるわよね。
と、彼女は続けて口にし、馬超の衣服の袖口を童女の如く掴んだ。
ふっ、と、馬超の口元に笑みが浮かぶ。

「そうだな、いいだろう。行くぞ、。俺が馬で遠乗りに連れて行ってやろう。」
「ラッキー!決まりね。じゃあ、早速行こう。
実はわたし、最近一人でも馬に乗れるようになったのよ。」
「ほぉ、そうか。ならばお前にも馬を用意してやらねばならんな。」

微笑を浮かべたまま彼が答えると、は軽く左右に首を振った。

「あ、今日は要らない。わたしも馬超と一緒の馬に乗せてよ。そのつもりだったんでしょ?」
「ん?まぁ、俺はそれでも構わんが。お前はいいのか?」
「いいに決まってるでしょ。いい男と一緒に馬に乗れるんだからさ♪」

彼女は機嫌良く馬超に返事をし、更に細い腕を彼の腕に絡ませてきた。
何の躊躇いも無く伸ばされたの手に、一瞬、彼が動揺した表情を見せる。
だが、彼女は全くそれに気づいてはいないようだった。
至近距離にあるの体からは、瑞々しい水蜜桃にも似た甘い香りが発せられていた。
馬超の動揺は徐々に大きくなり、彼はそれをに悟られぬよう心の内で抑え込んだ。
彼自身、十代の少年の様に心を震わせている己の状況に戸惑いを覚えていた。
彼とて男。
今日に至るまでには数多くの女人に出会い、閨を共にしたことも無論、幾度もあった。
不実と言うほど戯れに女人を腕に抱いたことは滅多に無かったが、
それでも女人との接触に頬を染める程純情な心根を持ち合わせている訳でもない。
しかし、今、女子に腕を絡められると言う程度の行為にさえ、動揺を示している自身が居る。
彼はそのことに少々驚きを隠せずに居た。
そしてまたこの瞬間、自らの気持ちに気付き、納得もしていた。

「・・・。」
「ん?何?」
「お前は、他の者にもこういう事をしているのか?」
「・・・??こういう?」
「俺の腕に腕を回しているだろう。」
「え?ああー、・・・・・・・・・・嫌だった?ごめん、ちょっと馴れ馴れしかったかも。」

言いざま、彼女が彼の腕から自身の体を放し、距離を取る。
同時に、ふうわり、と、甘い香りが馬超の周囲から遠のいた。

「違う、言っておくが、そうじゃないぞ。」
「??じゃあ・・・?」
「もしも他の者にもしているのなら、これからは俺にだけにしておけ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」

問い返すは足を止め、彼を見上げた。
馬超の台詞の真意を理解しかねている様だ。

「女子にならば仕方ないだろう。だが、男では俺だけにしておけと言っているんだ。」

そう口にし、彼は同時に片手での細い肩を抱き寄せた。
半ばよろめく形で、彼女は彼の胸に身を預ける。
明らかには、未だ、言葉の意味と状況を把握出来ていない。
平生ならばこの程度のやり取りで戸惑いを見せる彼女では無かったが、
相手が馬超となると彼女のほうでも話が違っていた。

「馬超!?こんなことしてそう言うこと言うと、ふ、深読みするわよ?」
「はっはっは、ならばそうするといいだろう。俺は一向に構わん。
いや、寧ろそうしてくれ。」
「!?」

馬超の腕の中。
が瞬時に硬直する。
彼は再度、口元に笑みを浮かべ、彼女の髪へと軽く口付けた。

「ばっ・・・・馬超!?」

動揺を隠し切れぬ様子のが驚きに満ちた声で彼の名を呼ぶ。
馬超は彼女を腕から解放し、先を歩き始めた。

「そろそろ行くぞ、。この話の続きは向こうに着いてからだ。」
「ええ!?ちょっと・・・馬超、本気で!?あ、ちょっと、待ちなさいよ!」

を残して足早に廊下を進み始めた馬超を、彼女が慌てて追っていく。

程なくして、青く澄み切った空の下、一頭の馬に揃って乗っていると馬超の姿がある。


それは、第三者から見れば、紛れも無く仲睦まじい恋人同士そのものに違いないのだった。


(終わり)



後書き
2度目の馬超夢〜・・・馬超?って感じなのはもう今更なのでスルー推奨(笑)
他のサイト様の女慣れした馬超も大好きなんですが、どっかお堅い感じの彼も好きです。
ってことで、私のサイトは私の第一印象『正義のお堅い男』に近い感じにしてみました。
しかし、司馬懿と言い馬超と言い、私にしては珍しいキャラばかりだな(笑
ではでは今回はここまのでお付き合い、誠に有り難うございました。失礼します


ブラウザバック推奨