合コン。
特に興味があった訳じゃないけど、全く興味がなかった訳でもない。
だけど今回誘われたその飲み会は、『合コン』と言うより、
どちらかと言うと本当にただの『飲み会』と言う感じだった。
最初から彼氏、彼女一緒だったり、お互い仲が良かったり、
だから特に構えることもなく、私はそのお誘いをOKしたのだった。
だけどまさか、私の知ってるメンバー以外に、彼も来てたなんて。

「あ!あたし周瑜さまの隣がいい!」
「そうか、小橋。ならばここに座るといい。」
「わーい!周瑜さまー!」

店に入って第一声、小橋がそう言って、彼氏である周瑜先輩の所へ飛んでいく。
更に、私の右隣の大橋が周瑜の向かい側の席に視線を向けて、
嬉しそうに笑顔を見せる。

「孫策さま!」
「おお!大橋、来たか!こっちが空いてるぜ!」
「はい!あ・・・でも・・・。」

言って、彼女が私と私の隣の尚香を見た。
その大橋の反応に、クス、と、尚香が笑う。

「行って来ていいわよ、じゃないとワタシが後で兄さまに愚痴られちゃうわ。」
「そうよ、ほら、小橋なんか気にせずちゃっかり彼氏の隣だし。それにその方が自然だしね。」
「あ、ごめんなさい、お二人とも・・・。じゃあ、お言葉に甘えます。」

頭を下げて、彼女は私達から離れて行った。
尚香が肩をすくめて苦笑する。

「やっぱりこれはただの飲み会ね。見て、普段一緒につるんでる連中ばっかり。
ふふ、でも、まぁ、その方が気兼ね無くていいかもしれないわね!」
「そうだね。元から合コン♪って、期待してた訳じゃないからね。
やっぱり知ってる顔ばっかりの方が楽しめるし。」

「貴女方も此方の席が空いていますよ、どうぞ、座ってください。」

そう声を掛けてきたのは、一つ年下の陸遜君。
その隣には甘寧先輩と太史慈先輩が座っていた。

「ありがとう、陸遜。、あそこに座っちゃいましょう。」
「あ、うん。って、太史慈先輩が居るなんて珍しいですね。」
「ははは!俺もたまには付き合えと、孫策殿に引っ張られて来てしまってな。」

太史慈先輩の向かい側に座りながら、先輩の右隣、
私の斜め前になる席が空いている事に気付く。

「?あれ、ここって、誰も来ないんですか?」
「ああ?あーそこにゃ、アイツが・・・・・・・・・・・。」
「アイツ???」

私の質問に甘寧先輩がそう答えて、私が首を傾げていると、
不意に、上から聞きなれた声が降ってきた。

「・・・・何であんたがこんなとこに居るんだ?。」
「・・・・・・・・・・え!?なっ!凌統!!!」


驚いて見上げれば、幼馴染、凌公績の姿。
しかも、何が気に入らないのか機嫌悪げに片眉が少しだけ上がってる。

「何でって・・・誘われたからに決まってるでしょう。」
「ふぅん、誘われた・・・ねぇ。どこぞの鳥頭にかい?」

「おい!凌統!てめぇ聞こえてやがんだよ!」

甘寧先輩がそう言ってジロリと彼を睨み付けた。
この二人、犬猿の仲ってヤツらしくて、大学内でも何かとこうして喧嘩する。
と言っても、たまに二人でオセロゲームして物をかけたりしてるから、
心底仲が悪いって訳でもないみたいだけど。

「とにかくまずは席についたらどうですか?凌統殿。」

笑顔で促す陸遜君に、何故か一瞬、凌統の眉がピクリと反応した。

「はいはい、大人しく座りますよ。」

こうして、その日の飲み会は始まった。
私としては凌統が参加してたのはホントに予想外ではあったんだけど。
大体、彼はいつも綺麗な女の子連れてふらふらしてる感じだったし。



「尚香、私ちょっとトイレ行って来るね。ついでに家にも電話入れてくる。」
「ええ、分かったわ。」

皆お酒も入って結構盛り上がりを見せ始めた頃、時計を見れば、
もう10時近くになっていた。
私は尚香に声を掛けて、トイレに向かう。
それからトイレを出ると、すぐに店の外まで出てケータイを取り出した。

「あ、お母さん?うん、そう、私。もう少し遅くなりそうで・・・え?
ああ、それは大丈夫、皆知ってる友達ばっかりだし。
帰り?帰りは・・・・・・「俺が送って帰りますから、
ご心配なく。ああ、突然すみません、俺ですよ。公績。」

「なっ・・・!!!???」

突然。
耳元からケータイを引き抜かれて、
私の手にあった筈のケータイは、いつの間にか私の後ろに立って居る凌統が持っていた。
それどころかお母さんと会話まで始めてるし。
あんまり突然の事に驚いて、私は目を見開いた。

「何勝手に・・・!あ、こら、ちょっと・・・!凌統!」
「タクシー代?ははっ、要りませんって。俺とコイツで割り勘って事で。
はいよ、お引き受けしました。じゃ。」

ピッ。

勝手にケータイを引っ手繰って、勝手にお母さんとの会話を終わらせた凌統。
私は再度、彼の手にあるケータイに手をかけた。

「もう!何のなのよ?突然!」
「あんた、何でここに居るんだ?」
「・・・な・・・???何言ってんの?
家に電話してたとこで、貴方が邪魔したんじゃないの。」
「・・・俺が聞いてんのは、そう言う意味じゃないっつの。」

少し、苛立ったみたいに答えた彼は、また、片眉を上げて私を見下ろす。
機嫌の悪い証拠。
だけど、全く意味が分からない。

「・・・?今日、誰に誘われたのかって、さっき言ってたあれ?」
「そうゆうこと。やっとご理解頂けましたか?殿。で、誰だ?」
「誰って、尚香と二喬。3人は陸遜君だって言ってたけど・・・。」
「へぇ、そう言う流れか・・・。さすがにやるねぇ、あの策士。」
「?????」

ぶつぶつと独り言を呟き出す凌統に、私は益々意味が分からなかった。

、あんたはもうちょっと警戒心ってのを持った方がいいぜ。
ったく、男が複数参加してる飲み会なんかに、ホイホイ出向くなっての。」
「ホイホイ!?そんな言い方・・・!大体、あのメンバーの何処に警戒心が必要なのよ!?」

彼のいい草にムッとして思わず私は声を上げる。
自分で自分の声に驚いて、私は一度、口を閉じた。

「・・・それに彼女持ちの先輩方ばっかりだし。」

コホン。
咳払いして、小さく付け足す。
凌統はそれを見て、わざとらしく深い溜息を吐いて見せた。

「彼女持ちって言っても、あの二人だけだろ。
あの猪男と腹黒な後輩は今フリーだ。しかも、明らかにあんた狙いでね。」
「・・・・・・・・・・ええ!?何!?まさか・・・!」
「やれやれ、やっぱり気付いてませんでしたか。鈍感な女はこれだからねぇ。」
「それ絶対誤解よ・・・!それなら尚香目当ての方がまだ・・・。」

と、私が言いかけた所で、またもやわざとらしく溜息を吐く凌統。

「彼女が劉備教授といい仲だってのは、暗黙の了解だろ。
特に俺ら仲間内じゃ知れ渡ってる。」
「そ・・・それは・・・そう、だけど・・・。」

とは言っても、凌統の言う様に甘寧先輩や陸遜君が私目当てだなんて、
到底信じられないんだけど。
と、言うのがモロに顔に出てたらしくて、凌統が呆れたみたいな視線を向けてくる。

「鈍いのもここまでくると、腹立ってくるってもんだな。」
「な、何よ、それ・・・?」
「あんたさ、俺が苛々してる理由、分かってんの?」
「・・・・・・・カルシウム不足。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

だって昔から、余り牛乳は飲まなかったじゃない。
なんて、ズレた事を考えつつ、私は彼から視線を逸らした。

「分からない、全然。」
「・・・でしょうねぇ。・・・ったく・・・・・・・!?」
「え?あたっ、今度は何!?」

突然。
何かに気付いたみたいに私の後ろに視線を向けた凌統が、
私の腕を掴んでそのまま店のすぐ傍の路地裏まで引っ張っていく。
その力が、驚く程強くて、私は思わず顔を顰めた。

「凌統・・・!痛い、離し「少し黙ってろっつの。」

彼が私の言葉を遮って、大きな掌で唇を覆われる。
一瞬、息が止まるかと思った。
違う、止まりそうだったのは心臓の方だ。

「んっ・・・むぐ・・・!凌・・・統・・・!?」
『この状況で無理に喋るなよ、。』

ヒソヒソと、囁く声で彼が言った。
しかも、耳元、唇を寄せた形で。
ビクン。
と、体が震えたのが自分でも分かる。

「あら?甘寧じゃない、何してるのよ。こんな所で。」
の奴、えらく遅いと思って見に来たんだけどよ、見当たらねぇんだよ。」
「ああ、確かにそうね。でも、子供じゃないんだし、きっとすぐ戻って来るわよ。
それより、兄様が相手しろって叫んでるわよ?」
「策の旦那が!?・・・しゃーねぇ、行くか。」

耳に飛び込んで来たのは、甘寧と尚香の会話。
私を心配して出てきてくれたみたいだった。
さすがに、このままじゃ皆にもっと心配かけるかもしれない。
そう思って、また口を開こうと、凌統の手を退けて声を出そうとした、
その瞬間。

『黙ってろっての・・・。』
「え・・・・・・・んっっ・・・・・・・・!!」

彼の唇で、塞がれた、私の唇。
抵抗する為に咄嗟に上げた両手を、
逆に彼に壁に押し付けられて動きを封じられる。
身じろぎさえ出来ない位、凌統が体を密着させた。
太腿を割って、絡められる、彼の長い脚。
湿り気を帯びたお互いの吐息が、口内を一杯にする。
自分でも気付かない間に、私は抵抗する力を弱めていた。

・・・。」
「・・・凌統・・・何・・・で・・・・?」

ほんの少しだけ、唇を離した彼が、私の名前を呼ぶ。
私は半分涙目になりながら、掠れた声で言った。

「・・・こんな・・・・そりゃ・・・貴方は慣れてるかもしれないけど・・・。」

嫌じゃ、無かった。
だけど、こんな、訳の分からない形で、それこそ無理やりされたキスなんて、
嬉しくなんかあるはずも無くて。

「・・・あんたさ、ほんと、何も分かっちゃいなんだな・・・・。」
「・・・・・・え?」

またしても、苛立ったみたいな凌統の声。
彼は私から体を離してから続けた。

「俺がさっきから機嫌悪い原因は、あんたなんだぜ?。」
「・・・・・・私・・・?」
「そうですよ。こっちはどうやってあの狼共からあんたを護って、
自分のもんにするか必死で考えてたとこだってのに、
肝心のあんたが自分から飛び込んで行っちまうなんてねぇ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

軽口、冗談。
そう言って、聞き流せなかったその台詞。
いつもの口調でからかってるとしか思えないのに、その瞳は、真剣そのもので。

「・・・いつから、そんな男になったのよ・・・貴方は・・・。」

思わず、私は小さく呟いた。

「へぇ、そりゃ勿論『そんないい男』って意味だろ?分かってますって。」
「・・・馬鹿・・・・。」
「でも、好き、ってとこかい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

目の前の幼馴染は、身長も、台詞も、仕草も、ムカつく位、何もかもが『男の人』
見透かしたみたいなその瞳。
泣きボクロのタレ目男。
だけど。


「・・・・・・・・・・・うん。」


結局、小さく頷いてしまった私。
凌統は、嬉しそうに微笑んで、私を抱き寄せてまた囁いた。


「このまま二人で抜けちまおうぜ。
ついでに言うと、俺も勿論、狼の中の一匹ですけどね?」



(終わり)



後書き
最後、微妙過ぎる(苦笑)そしてまた長々と書いてしまいました。
どうやら相手キャラ以外を登場させると、どうしても収め切れないようです。
補足、陸遜が敢えて遠まわしに呉3人娘を誘ったのは、
彼女らとヒロインが仲がいいのを知っていて、
絶対にヒロインを引き連れてくる事を計算しての事でした。
そして今回は何気に垣間見える人物相関図(笑)策達は2つか3つ年上って事で。
では、今回もここまでのお付き合い、誠に有難うございました!


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