「おっと、もうお目覚めかい?。
こんなに早くお相手が目覚めちまうとは、俺も歳食ったもんだぜ。」
煙草に火を点けていた左近教授が、
私が体を起こした瞬間に口にした第一声がそれだった。
自然に私の眉間にしわが寄る。
「よく言う、体力には自信があるって言ってたじゃないですか。
それに、目が覚めたのは偶然です。喉が渇いたし。」
ふぁ、と、漏れ出そうになる欠伸をかみ殺し、
私はそのままベッドから抜け出ようと体を動かした。
「待った。」
「・・・え?」
「そんな悩ましげな姿で歩き回らないでくれよ、姫?
せめて一枚羽織った方が良いと思うんだがね。」
「あ!」
咄嗟に私は掛け布団を胸元にかき集めて体を隠す。
寝惚け半分で忘れていた、今の自分の状況を。
部屋の中が適度にあったかくて、結局下着さえつけずに眠ってしまった事を思い出し、
私は思わず左近教授をジロリと睨み付けた。
「おいおい、そりゃ俺のせいじゃないだろう。
親切に教えて差し上げたんだ、感謝願いたいもんだな。」
「・・・・教授、そこにある上着、取って下さると嬉しいんですけど。」
「ああ、これかい?その前に、その『教授』ってのと敬語は今の状況じゃ頂けないね。
公私のけじめをつける為にも、ここは呼び捨てといこうや。」
言って、私の目を見た左近教授がニヤリと笑う。
確かに、教授と『こう言う関係』になってもう1ヶ月近く経つし、
それは納得出来るとこではあるんだけど。
ただ、どうにも慣れない。
それに何より恥ずかしいなんて思いが先に出てしまう。
「・・・・左・・・・・近・・・・・・・・・・・・・・。」
声が少し掠れた。
しかも、殆ど聞こえてないかもしれない。
「今は照れくさくても、口に出してりゃその内慣れるってね。」
苦笑じみた笑顔と一緒に彼は言った。
それから煙草の煙をくゆらせながら、
私の上着を掴んでそれを私の方まで持ってきてくれる。
「あ、ありがとうございま・・・・・・・・、有難う。」
「クッ・・・面白い娘さんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
すぐそうやって、子供扱いする。
なんて考える辺り、私もまだまだ子供なのかもしれない。
だけど、左近教授の前では、逆に他の人の前よりずっと子供っぽい姿を見せてばっかり居る気も、
実は、しないでもないんだけど。
「・・・・・・・・教・・・、・・・・左・・・・近。」
「ん?」
「いや、あの、上、着たいから、そんなとこに立ったままで居られると、
スッゴク気になるんですが・・・・・・・・・・。」
私に上着を手渡した後も、彼は何故か私の傍に立ったままで居る。
「へっ、今更恥らう仲でもないと思うんだがね。
俺は既にあんたの体の隅々まで攻略済みだぜ?」
「なっ・・・!!!!」
思わず、顔が真っ赤になる私。
何でこうなんだろう、本当に。
こう言っちゃなんだけど、私だって今まで好きな人や付き合った人が居なかった訳じゃない。
彼氏になった人とは、それなりに普通の恋人同士ってのをやっていた。
なのに、教授は今までのそれなんか、全く、どこにも当てはまらない。
絶対的に、足りない経験値。
「・・・ホント・・・、・・・・左近・・・から見たら、私は小娘同然にしか映ってないんだろうな・・・。」
小さな溜息と一緒に、私は思わず独り言を漏らした。
フー、と、煙を吐き出した彼が私を見下ろす。
「だったら手なんか出してないさ。、あんたは大学内の受講生に手を出すなんざ無様な失敗だけはしないと思ってたこの俺が、
それを自分の中でねじ伏せても欲しいと思った相手だからな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
やっぱり、ズルイ、大人の男。
そんな軽く言ってるみたいな言葉でも、こんなに私を動揺させてくれるし。
それとも、これは左近教授なだからなのか。
多分、どっちも、だと思うけど。
「そう言やあんた、喉渇いたって言ってたな。」
「・・・そう、だから上に何か羽織ろうと思ってたのに、そうやって邪魔するから。」
「ははは!邪魔とは言ってくれるねぇ。」
豪快に笑って、左近教授は片手にあった煙草をテーブルの上の灰皿でもみ消しに行く。
私はその隙にごそごそと洋服を着ると、ボタンを留め始める。
「おっと、、もうその必要はなさそうだぜ。」
「・・・・・・え!?」
上までボタンを留めてしまう前に、左近教授がまたベッドの傍まで来ていた。
ビックリして、見上げると、彼の片手にはミネラルウォーターがある。
「飲ませてやるよ、ま、俺の飲みかけだがね。」
言って、すぐに彼は水を口に含んだ。
私が何か言おうと口を開いた瞬間に、濡れた教授の唇が押し付けられる。
「・・・・・・・っ・・・・・・・・・・!」
―ゴクッ
小さく鳴った私の喉。
生暖かい、そして少し、苦味のある液体が喉を通過していった。
煙草の味。
私の口で全部は受け止めきれずに、重ねた唇の端から水が顎へ、鎖骨へ、流れてく。
洋服にその雫が流れつきそうになるより早く、
教授の大きくて武骨な手が私の襟元から強引に差し入れらた。
私の右胸全部を簡単に包んでしまう大きな掌が、撫で上げるみたいに雫を拭う。
「んっ・・・・・!」
ビクリ。
震えてそれに反応してしまう私の体。
口内に舌を挿しいれられ、煙草の苦味がさっきよりもっと濃くなる。
いつの間か壁に背中を押し付けられるような状態になりながら、
少しずつ意識が遠のいていくみたいな感覚に陥り始めていた。
自分がこんなに、キスひとつにも、
夢中になれる奴なんて、左近教授と出会うまでは思ってもみなかった。
「これはもう用済みだな・・・。」
唇と唇が触れ合う擦れ擦れの距離で彼が呟く。
『これ』が何を指しているのか分からないで居ると、
胸元の左近教授の手が、ボタンが留まっている部分まで強引に降りてきた。
それと一緒に、ボタンがギチギチと弾け飛びそうになっている。
―ブ・・・ッ・・・
糸の千切れる音。
それからその後、それが2.3回位、続いた。
全開になってしまった私の胸元。
ギッ。
教授が重心をまた私の方に傾けて、ベッドのスプリングが小さく軋む。
胸の上の彼の大きな掌が、さっきよりも力を込めて動き始めた。
自然と、弾む、私の吐息。
「俺のあんたを見る目に狂いはないぜ。
何たってこの俺がこの短期間で溺れちまってるんだからな・・・・。」
首筋。
舌を這わせながら、教授が言った。
「追われる恋は好きじゃないんじゃ・・・、なかったの・・?」
私の一方的な憧れ。
そう思ってた頃もあって、私は途切れ途切れにそう口にした。
教授の瞳が、不意に、私の視線を捕える。
「分かってないな、。俺は今あんたを追ってる最中だろ?」
「・・・・・・・え?」
聞き返す私に、ふっ、と、彼の視線が和らいだ。
「お喋りはここまでだ、さぁ、お楽しみといこうか。」
絶対的に、足りない経験値。
だけど、それをカバーできる愛情が、あるんだと、
今はそう自惚れてもいいだろうか。
ねぇ、教授?
(終わり)
後書き
・・・・・・・・・・・難しいって、戦ムソ2キャラ!!!左近ってまだ2回しか書いてないのに、
パラレルで執筆ってちょっと無謀?ですけど、実はこのパラレル部屋の私的メインは彼です。
ここまでお付き合い下さった方!誠に誠に有難うございました。失礼致します。
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