やさしくだまして

「なぁ、あんた、近々輿入れする事が決まったんだって?」

を彼女の自宅へと送り届ける道すがら、凌統は不意にそう彼女に問いかけた。
ほんの一瞬、は虚を突かれた様な表情を見せたが、すぐに満面の笑みで口を開いた。

「そうよ、何を隠そうこの私に一目惚れしてくれた、
それは素敵なお方なんだから!」
「へぇ・・・一目惚れ・・・ねぇ・・・。
その素敵なお方、どうやら眼の病にかかってるらしいな。」
「ちょっ・・・!それはどう言う意味よ・・・!」

さぁ?どう言う意味でしょう?
ニヤリと口角を上げて意地悪く笑う凌統に、は頬を膨らませ、童女の如き表情で抗議を示す。
その様子に、彼は小さく吹き出すと今度は声を上げて笑った。
つられたがフッと口元を緩める。
そしてすぐに彼と同じく声を立てて笑い出した。
空は快晴の青に満たされ、ふうわりとやわらかな輪郭の雲が幾つも浮かんでいる。
声を立てて楽しげに笑う彼らの頬を、温かな風がそっと撫ぜた。


それは常と何ら変わらぬ穏やかな時間。
それは常と何ら変わらぬ優しいひととき。
それは常と何ら変わらぬ楽しき時。


されど。 それは、互いの胸の内に秘められた恋心を覆い隠すために繕われた、
表面上の彼らの『日常』に他ならなかった。





やさしくだまして
(ねぇお願い、笑っていて。笑って私を優しく騙して。)
(それがアンタの願いなら。)







だけどホントは、そんな格好イイ男じゃないっての。
アンタに関しちゃ俺は馬鹿馬鹿しいほど情けない。
女々しい男だってのをイヤんなる程知ってるんだ。
なぁ、俺は本当はあんたの事が――――――――――――――――――――――――