、いい加減わしと共に城へ来い!
今日こそはその口から色よい返事を聞かせてもらうぞ。」


深夜。
共に横たわる寝台の上。
政宗はの頭の左右に両手をつき、上から彼女を見下ろす様にしてそう口を開いた。
一瞬、戸惑った表情を見せた彼女が、やがて瞳を伏せて彼から視線を逸らす。

「政宗様・・・ですが・・・。」

そこで彼女は先を続けず、無言で微かに首を左右に振った。

「・・・側室だと言うのが、納得いかん理由か?」
「いいえ・・・、その様なこと・・・決して。」
「ならば、理由を申せ。わしが何も聞かずに手を引く等と、お前も思ってはおるまい。」

降り注ぐ政宗の真摯な眼差し。
幾度と無く交わされた会話。
その度に彼女は決して首を縦に振る事は無かった。

「理由は既に貴方様もご承知のはず・・。
貴方様と私では・・・・・・身分が・・・、余りに違いすぎる・・・。」

は彼と視線を合わせぬまま、顔を横へ逸らせて再度瞳を伏せた。
揺らめく蝋燭の薄明かりの下、憂いに満ちた彼女の横顔。
それは政宗が思わず言葉を失ってしまう程の美しさを持っていた。
そしてそれ故に彼は彼女のこの横顔が苦手でもある。
これ程に強く彼女自身の全てを求めていながら、この横顔に魅了され、
紡ぐ先の言葉を曖昧にしてしまう。

・・・!」

彼女の名を口にした政宗が、上から覆い被さる如くしてその細い肢体を抱きしめた。

「・・・政宗様・・・は今でも十分幸せでございます・・・。
こうして貴方様が私の為に足を運んでくださるだけで。」
「馬鹿め!それではわしが足らんのだ!」
「・・・政宗様・・・・・・・・・。」

重なる互いの素肌が熱を呼ぶ。
前回の逢瀬は恐らく一月以上前になるだろう。
募る恋情に顔を合わせれば言葉少なに肌を重ね、互いを求め合っていた。
だがそれは決して肉体的な繋がりだけを欲しての事ではない。

「今更身分等と下らん理由でお前を長く目にする事も叶わんと言うなら、
最初からわしはお前を選んではおらんわ!!!」
「・・・・・・・ですが・・・・・・・・・・・」
「その様な言い分、理由の内には入らん!是が非でも、お前をわしの元へ連れて行く、良いな?」
「・・・・・政宗様・・・私は・・・・。」

微かに震えたの声は、未だ戸惑いと躊躇いを宿していた。
苛立ちを露にしていた政宗は、僅か彼女から身を離し、再び彼女を見下ろす。

、お前はわしを信じられんと言うのか?」
「いいえ・・・!政宗様を信じられぬなど、決して・・・!
私は政宗様を信じているからこそ、会えない時も貴方様を想う事ができたのですから。」

政宗を見上げる彼女の瞳が真っ直ぐに彼を捕らえた。
ふっ、と、政宗の視線が和らぐ。
彼は片手での顔を覆うようにして触れ、その手を彼女の瞼から鼻先にかけてゆっくり移動させた。
やがて、彼女のふっくらとした薄紅色の唇の形を確かめる様に、彼の指先がその上をなぞっていく。

「わしはお前がうんと言うまで何度でも問うてやる。わしの城へ来い、良いな?」
「・・・・・・・・・・・・・政・・・宗・・・様・・・。」
「わしを信じているというのなら、下らん恐れは捨てるがいい。
お前のその想いのままにわしについて来ると誓え、。」

彼は唇を彼女の耳元へと寄せ、半ば囁く様にして言った。
政宗の指先に触れるふっくらとした彼女の唇が、チリチリと熱を伴い始める。

「・・・こので宜しければ、政宗様のお傍に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

僅かに震える掠れ声で、彼女はそう返事をした。

「フン、馬鹿め!最初から素直にそう申せば良い物を・・・!」

満足げに口角を上げ、隻眼を細めた政宗は、
の耳元に寄せていた唇を即座に彼女の唇へと重ね合わせる。
ねっとりと深い口付けを交わしながら、
彼は彼女の肢体を掌を滑らせゆっくりと撫で下ろした。

「ん・・・・・・・ァ・・・っ・・・」

の唇から艶めいた小さな声が漏れ出る。
触れた先から上昇する熱は、
互いの心が重なった喜びを表わすかのように、留まる事を知らない。
彼女からほんの僅か距離を取り、政宗が再び口を開いた。

「明日の夜明け・・・、お前はわしと共に城へ向かうのだぞ、
だが今は・・・・・・・・・・・。」

低く、掠れた声音と共に呟いた政宗は、そこで言葉を切る。
彼は重心をに傾け、肌と肌とを密着させた。
更に、彼女のしなやかな両脚の間から、身体を割り込ませる。
既に政宗の体は彼女を求めて病まない状況まで追い込まれていた。

「今宵一晩、ここでの最後の逢瀬、お前の体に刻み込んでやるわ。」
「・・・はい、政宗様・・・・。」

恥らう表情と共には頬を朱に染め、微笑した。
久し振りに見せる、彼女の心底から幸せそうな表情。
政宗は思わず隻眼を僅かに細める。

「フン、やはりお前は笑っている方がずっと美しい女子だ。
今まで・・・・・わしこそが大馬鹿者であった・・・。」
「・・・え?」

独り言の如くに呟く政宗に、が不思議そうな瞳で彼を見上げた。
憂いを含んだ艶さえ伴った彼女の横顔に、幾度となく目を奪われ、
言葉を失くしてしまった彼自身に向けた言葉。
それに彼女が気付くはずもない。


「覚悟せよ、。眠る隙など与えんからな・・・!」


口角を嬉しげに吊り上げる隻眼の竜に、は再び笑顔で応えた。

ゆらり。
揺らめく蝋燭の炎の下、政宗はようやく愛しい女の幸福な笑顔と言う、
美しい表情を目にしたのだった。



(終わり)



後書き
政宗、きみゃー思った以上に難しいよ。精進、精進・・・。
戦国キャラは書き慣れないと理由だけでなく、本当に難しいです。
ここまで読んで下さった方、誠に有難うございます。
ではでは、失礼致します。


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