「これで私も貴方と閨を共にした幸せな女の一人に仲間入りね?左近殿。」

笑みを含んだ声音でそう言い、 はゆっくりと布団から身を起こした。
僅かに開いた障子から差し込む月明かりが艶かしく彼女を照らし、
その扇情的とも言える体の曲線を青白く浮かび上がらせている。
左近はそんな彼女の姿に魅せられた如く、微かに瞳を細めた。
は傍に脱ぎ捨てられている着物を拾い上げ、羽織る。

「・・・おいおい、まさかもう行っちまうのかい?朝にはまだまだ余裕があるぜ。」
「ふふ、左近殿ともあろうお方が情けないわね。1度のお相手、と言う約束だったでしょう?」
「アンタも本当に食えない娘さんだ。それで約束どおり出て行っちまうってのかい?」
「だって左近殿、あんたには次のお約束があるでしょう?」

彼女はそう言い、まるで悪戯っ子の様な笑みを浮かべて見せた。
左近は身を起こし、素早く彼女の腕を掴む。
そして手馴れた様子で再度、彼女を布団の上へと押し付けた。

「悪いがこの先の約束は全部無くなっちまってね。
、あんた以外俺を相手にしてくれる女は居ないんだ。」
「私の予定は無視?」
「あんたの予定は全部俺で埋まってる筈だがね。」

ニヤリ。
左近が妖しげに口角を上げる。
はそれに応える様に微笑んだ。

「結構な自信がおありだわね、左近殿。」
「あんたがどうでもいい手合い相手に体を許すとは思えないんでね。」

言いながら、彼は既に大きく肌蹴ている羽織っただけの彼女の着物の胸元から、
手を差し入れて肌に触れた。
柔らかくなめらかな の肌が、掌に吸い付く様な感触を彼の掌に与える。

「っ・・・ふっ・・・・」

吐息にも似た甘い声が彼女の紅い唇から漏れ出た。
左近は彼女の肌を味わう如く、体の隅々まで手を滑らせる。
見下ろす彼女の表情は、この上なく妖艶でありながら、
反して何処か少女の様にも見えた。
彼は今まで数多の女と閨を共にしており、その中には目を見張る程の美女も、
素晴らしく均整のとれた体を持つ女も居た。
身分も性格も様々な幾人もの女達。
深く愛を紡いだ者、一夜限りの相手、火遊びの情事。
体を重ねる瞬間の快楽もまた様々だった。


・・・あんたにゃ随分と手を焼かされたもんだな・・・・。」


彼女の豊満な胸の膨らみに舌を這わせながら、不意に、左近は独り言の如く呟く。
は今まで腕に抱いたどの女人とも決定的に何かが違う、と、彼は感じていた。
ここまでに至る経緯の長さも去ることながら、
彼を惹きつけて病まない魅力が彼女にはあるのだった。

「追われる恋より追う恋・・・を・・・お望みだったんじゃないかしら・・・?」

クスクス、と、左近の頭上から の笑う声がする。
その声は彼の舌使いによって、僅か掠れたものになっていた。

「今も余り状況は変わってない様に思えるがね・・・。」

思わず苦笑しながら、彼は舌をゆっくりと彼女の首筋から顎へと移動させる。
そして唇に到達すると、 の瞳を覗き込む様にジッと見下ろした。

「どこまでも興味が尽きないねぇ・・・、 、アンタって女には。」
「それはどうも、光栄です。」

フッ、と、彼女が瞳を細めて微笑む。
は両腕を彼の後頭部に回すと、自らその唇を彼の唇へと押し付けた。
左近は彼女に覆い被さり、荒々しくその紅く艶やかな唇を味わう。
刹那、彼の鼻腔をくすぐる甘やかな芳香。
直に触れ合う肌と肌。
己が内の欲望が再び大きく膨れ上がっているのを、互いに感じ取っていた。
弾む吐息が室内に艶かしい湿度を与える。
じわりと滲む汗。
の白い手が彼の厚い胸板を弄る如く動く。
確実に行為に溺れ始め、
互いの荒い吐息と彼女の唇から零れ出る甘い声だけが場を支配した。


―最後の女。


彼女と肌を合わせながら、左近の脳裏に不意に浮かぶ言葉。
彼は心の内で、苦笑と共にそれに頷く。
未だ見えない の心。
されど決してこれは負け戦ではない。
そして、決して負けるつもりもない。
勝ち取ったその先。
その先は・・・・・・・・・・・・・・・・・。


覚悟してもらうとするか。


一人、心の内で呟き、彼は一切の思考を停止すると、再度彼女の体へと溺れていった。



(終わり)



後書き
何だか・・・左近書くときは絶対微エロ方向な気がする・・・(苦笑)
そしてヒロインの性格が攻めだと決定してしまった作品(涙)
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有難うございます。
失礼致します!


ブラウザバック推奨