「お、お、おお?わぁっ!」
―バサっ
ドササササッ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・・・・ふっ、まただわ。
またやってしまった・・・・・・。
ハァー。
自分自身に深く呆れつつ、地面に落してしまった洗いたてだった筈のタオルを拾う。
やっぱり2回に分けて運ぶんだったと、後悔しても勿論もう遅かった。
少なくとも直接砂がついたタオルはもう一度洗い直さなければいけない。
上の方はどうにか無事だけど、脱水にかけたばかりで湿ってるから、
一番下になったタオルは明らかに汚れてしまってる。
ああ、最悪。
何だってこうドジなの。今時こんなベタっこ居ないわよ。
ああ、居た‥・・・・・・ここにね!!
なんて一人ツッコミを入れつつタオルを拾っていると、
ひょいひょいとどう見てもより手早くタオルを拾ってくれている男の人の手が見えた
顔を上げ、視線をそっちへ移す。
「仙道!!」
「よぉ、はは、今日も派手にやってるな、さん。」
「うううう、面目ないわ。」
最悪だ。
よりによって、よりによって仙道に見られるなんて。
って言うか、もう何度も見られてるけど、だからこそ見られたくなかったっていうか。
仙道はがマネージャーをしているバスケット部のエースだ。
凌南2年の仙道彰と言えば、神奈川で少しでもバスケットに興味のある人間なら知らない人はいない。
それ位に有名で、そして才能溢れる選手。
天才、仙道とまで言われている。
「カゴは俺が持つよ。」
どうにか無事なタオルばかりを集めて入れてあるカゴを、
仙道は片手でひょいと持ち上げて言った。
は咄嗟に慌ててそのカゴに手をかける。
「ええ!?いいよ、いいよ!の仕事だし。」
「気にするなって、どうせ同じ方向なんだ。
それにこのタオルは、俺たちが使うもんだろ。」
「ああああ、うう、・・・・・有難う。」
結局、いつもこうなってしまう。
正直凄く助かるし、凄く有り難い、ホントに仙道には感謝してる。
だけど毎回こうしてドジっぷりを披露しては、
(しかも毎回同じような光景を繰り広げている・・・・)
仙道に助けられて迷惑ばっかかけてるみたいで、
マネージャーとしては情けない気持ちで一杯だ。
もっと言ってしまえば、青い春真っ盛りの乙女としては、その倍はやるせない。
そう、は無謀にも仙道に片思いしていたりする。
実は入学早々一目惚れしてしまった訳だけど、
当然告白なんか出来る筈もなくて、
それ以前に仙道は学生生活の9割以上をバスケで埋め尽くしてる。
なんか眼中にある筈もない。
それはもう、充分に分っていた。
だからの仙道への気持ちは諦められないと言うのとはちょっと違う。
ただ、少しでも彼の力になれて、そして少しでも側で彼を見ていたかったのだ。
だから仙道が田岡監督のスカウトで、
バスケ部に所属する為にこの高校へ来たんだと知った時、
は迷わずバスケ部のマネージャーになろうと決心した。
本当のところ、バスケなんて中学までは体育の授業程度の知識しかなくて、
興味だって殆どなかった。
それでもはマネージャーになると決めたその日から、
ありとあらゆるバスケ雑誌を読み漁ってバスケットに対する知識を身につけた。
今でもあれは笑ってしまう。
受験勉強なんかよりずっと猛勉強をした気分だった。
その後晴れてバスケ部のマネージャーになれて仙道を間近で見られるようになって、
は仙道のバスケに対する思いがどれだけ強いのかを日々ひしひしと感じていた。
夢中になってバスケをしている彼を、もまた、夢中になって目で追っていた。
でもそうしながら、いつも思ってた。
ああ、この人はホントに雲の上にいるみたいな人だなって。
バスケの知識を身につけて、彼のバスケをする姿を目にして、
それを感じない日はなかった。
見ているだけでいい。
なんて、ベタな片思いの仕方かもしれないけど、今の状況では十分幸せだった。
――――――ただし、この笑える位なドジっぷりを披露している自分を除いては、だけど。
「ありがと、仙道。ここまででいいわ。
早くしないと遅れるでしょ。もすぐ行くから。」
「ああ、頑張れよ、マネージャー。」
言いざま、仙道が笑顔での頭をぽんぽんと軽く叩く。
どうやら190もある彼としてはの頭は叩き易い位置にあるらしくて、
いつもこうして気軽に手を伸ばしてくる。
そりゃまぁ、嬉しくない訳じゃ決してないんだけど、でも、乙女心としては複雑だ。
「子供じゃないんだからね!」
に背中を向けてひらひらと片手を振って体育館へと歩いて行く仙道に抗議をする。
これもいつもの光景。
もう何度となく目にしているのに、それでも目で追ってしまう。
仙道がバスケをしている姿。
練習だろうと、試合だろうと、どうして、あんなに綺麗なんだろう、彼は。
勿論、試合の時の生き生きしている姿が一番なんだけど。
「おい、!ボケっとしてないで記録を取らんか!」
「わわわっ!すみませんっ、田岡監督!」
文字通りボケラっと仙道を見ていたら、田岡監督に叱られてしまった。
駄目だわ、またドジっぷりを発揮する所だった。
って言うか、これはもう既に発揮してるのか。
「あはははっ、さん、また田岡監督に怒られてはるわ。」
「ふっ、アイツは一生懸命さは認めるが、抜けているからな。」
「ああー!ちょっと!相田君!魚住先輩!聞こえてますよ!」
はシャーペンを握っている手を前へ突き出し、
コートに居る二人に声を上げて言った。
またってのは、何よ!またってのは!!・・・・・当たってるけど。
「!」
またしても田岡監督に怒鳴られる。
「は、はいい!」
思わずビビって返事をする声も裏返る。
監督は、困った奴だ、的な目をに向けてから、今度はコートへ視線を移した。
「相田、魚住、お前達も集中力が足らんぞ!」
「はい!!すみません!!」「すんません!!」
ふむ、さすが田岡監督、容赦なしね。
なんて人ごとっぽく言ってる場合じゃない。
連続で怒られてしまった。
が一人、わたわたと慌てていると、視界の隅に仙道の姿が目に入った。
笑ってるし・・・。てか、この場合笑われてるし!!!
これもまぁ、日常茶飯事なんだけど、だからこそ情けない。
はそれから俯いたまま、とにかく必死でシャーペンを走らせた。
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