「・・・・っ!!!」
「偶然だな、お嬢さん。君をお茶会に誘おうと迎えに来たところだよ。」

絶体絶命の、大ピンチ。
とは、このことだろうか。
まさかこんな恐ろしいタイミングでブラッドがの部屋に来るなんて。
だけどここで挙動不審な態度を取って、
ブラッドに怪しまれでもしたらそれこそ最悪だ。
お茶会なら二人っきりになったとしてもブラッドが盛り始める危険も少ない。
どうにか自然にことを運んでこの試練を乗り切るしか、
に生きる道はないと言えた。

「ん?洋服を着替えたのか、
シックな落ち着いた女性らしい装いだな。」
「え、ああ、そうそう、気分転換にね。」

いきなり洋服の事を持ち出されて必要以上にビクついてしまう。
別にビビることはない。
が洋服を着替える事は珍しい事じゃないんだから、
ブラッドも特に意味があって口にした訳じゃないだろう。
と言うか、彼みたいな気障な人種は、
女の人のちょっとしたことを褒めるのが礼儀だと心得てる。
だから褒めてくれたんであって、それ以外に意味がある訳じゃない。
そうだ、ビビるな、

「だが君にはこの間私服としても着られるような洋服を贈っただろう?
そろそろ私が贈ったものにも袖を通して欲しいものなんだが・・・、
君の好みには合わなかったのかな?」
「そんなことないけど・・・・・・。」

確かに、ブラッドからはもう何度も洋服を贈られてる。
洋服だけじゃなくて、それに合った靴やアクセサリーも。
でもアリスも言っていたように、
幾らなんでもそれで着飾って外出するなんてあり得ない。
彼の気持は本当に本当に嬉しかった訳だけど、それとこれとは話が別だ。
たまにクローゼットから出して一人ファッションショーを繰り広げたりもしたけど、
さすがに人目の付く場所にそれを着て出る勇気はない。
と彼はそこまで歳の差が大き訳じゃないけど、
どう見ても恋人同士に見える程お似合いって感じじゃないし。

「そうか、ならばせめて二人きりで居る時くらいは身に着けてくれてもいいだろう。
丁度いい、クローゼットの中に仕舞い込んで肥やしになっている私の贈り物に、
そろそろ日の目を見せてやろうじゃないか。着替えて見せて貰おう。」
「―――――・・・・・・・・え゛!?はい゛!?」

ブラッドの思いもよらない台詞に、は思わず妙な声質で返事をした。
彼はそんなの様子を全く気にせず、いつも通り、ゆるくダルイ口調で続ける。

「安心しなさい。そのまま外出を強要するようなことはしないさ。
今、ここで着て見せてくれればいい。」
「いや、あの・・・ブラッド!?でも、お茶会が・・・。」

ヤバイ。
ヤバイ。
ヤバ過ぎる。
変な方向に話が転がり始めている。
と言うか、これは。

「お茶会はその後でもいいだろう。
私は今、君が私の贈った服を着た姿を見てみたいんだ。」
「っ。」

デターー!!
この発言。
最悪。
本気、最悪だ。
ブラッドの贈ってくれた洋服はどれも趣味が良く、
しかもみたいなもろ東洋人な人間が来ても浮いたりしない、
派手すぎないデザインばかりだ。
とは言っても、大体は肩や腕、脚が露出する物ばかりとも言える。
いつもならブラッドの前だけならいいか、と言う気にならないこともない。
だけど。
今回は、今回ばかりは。
無理だ。

「・・・?首がどうかしたのか?」
「くっ、首ぃっ!?」

ひっ。
思わず喉が掠れて更に声が裏返ってしまった。
大馬鹿者のは、この展開にビビりすぎて、無意識のうちに片手で首元を抑えていた。

「や、あの、ね、寝違えたのよ。それで少し、痛いなって。」

はっ、あはははははははっ!
乾いた笑いで必死に誤魔化す
ブラッドは少しの間怪訝そうな表情でを見つめた後、軽く溜め息を吐いた。

「そうか、君は寝ぞうはそんなに悪い方じゃなかったと思うんだが。
まぁいい、来なさい。私が着替えさせてやろう。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はいい!!??」

ナンテイッタ!!??


パニック状態に入りかけのに構わず、
彼がの肩を抱いてそのままの部屋へと足を踏み入れる。
は瞬間的に、真っ青になっていた。

「ちょ、まっ…じ、自分で着替えられるから!」
「フッ、今更照れる事はない。寝違えているのなら、動かすのも痛いだろう?
君に着てほしいドレスはもう決まっているんだ、私が脱がせてあげよう。」


誰か今すぐこのエロ親父を力の限り鈍器で殴ってくれ!!!!!!!


「いいっ、本気、自分で着替えるから!お願いだから放してっ!」
「そうまで抵抗されると益々私の手で裸にしてやりたくなると言うものだ。」
「ばっ・・・!!!目的が変わってるから!!ちょ、やっ!!」

ドサリ。

半分もみ合いに近い状態で攻防戦を繰り広げた挙句、
はソファに押し倒されてしまった。
この男は、自分の部屋だけでなく、ここでまでソファなのかと呆れたくなる。
だけど、今はそんな呑気な事を言ってられる余裕はには微塵もなかった。

「ブラッドっ!」
「逃げる獲物を追うのは雄の習性だ、お嬢さん。
君は男の煽り方をよく知っているな。」

言いながら、を片手で押えこみ、
器用にのジャケットを脱がしやがるブラッド。
この無駄な器用さが憎い。


死ね!!即刻死んでしまえ!!!


「このドS変態×××!!」
「口の悪いお嬢さんだな。誰が×××だって?
私は親切に着替えさせてやろうとしているだけだ。」
「いらないいらないいらないいらないから!!」

ククッ。
喉の奥で笑って、彼が自分の白い布手袋を口で引き抜いた。
その姿がまた嫌になる位色気があって、一瞬見惚れそうになってしまった位だ。
でも今はそんな余裕かましてる場合じゃない。
はとにかく無我夢中で抵抗を続ける。
最悪だ。
何でボリスとやった攻防戦をブラッドとまでやらないといけないんだろう。
いや、アイツのせいで今この状況に陥ってる訳だけど。

「やれやれ、、強情だな、君は。少し黙っていて貰おうか。」
「っ!?――ンんっぅ」

言葉を言い終えたのと同時に、ブラッドがの唇に自分の唇を重ねた。
そして、唇が合わさった途端、彼の舌がの口内に侵入してくる。
薄らと瞳を開いたままのブラッドはの表情を確かめるように視線を送りながら、
徐々にキスを濃厚なものに変化させていった。
認めたくはないけど、彼はイメージ通り、凄くキスが上手い。
いつの間にかブラッドのキスに意識を奪われて、
気付かない間に思わずぼんやりしてしまう位、だ。
マジで嫌な男。
そしては結局いつものパターンにハマる。
彼の舌に翻弄されて、自分からも唇を益々ブラッドのものに押しつけて求めてしまうのだ。
その間に彼は片手をの服の中へ入れると、ブラのホックを外す。
プツ。
と言う微かな音。
冷たい掌が慣れた様子での胸を柔らかく撫で上げ始める。
こうなるともう当初の目的なんかとっくに記憶の彼方だ。
と彼の口内に、とろりとした生温かい唾液が溢れた。
ブラッドはそれを喉を鳴らして飲みこむと、の顎を伝った滴を舐めとり、
唇を下へと下ろしていく。
そして――――――

「・・・・タートルネックと言うのは不便だな、やはり洋服は脱いで貰うぞ、。」
「・・・・・・・・・・・・‥‥‥‥‥‥‥え?あ・・・・。」

うん?待て?待てよ?何かまたブラッドのペースにノってるけど。
これって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「ンぁっ!!!」

があれこれと一人混乱している内に、
ブラッドは手際よくの洋服を脱がし終えてしまった。

「ヒィっ・・・!!!」
「随分と色気のない声を発してくれるじゃないか。
・・・もしかして首が痛かったのか?どれ、見せてみなさい。」
「な゛!?いい!!いい!!てか見ても分んないでしょう!寝違えてるとかの場合はっ!」
「まぁそうだな、だが君は先ほどからやけに首を気にしているだろう。」

ギクッ。

思わず冷汗すら掻いてしまいながら、
は必死でこの状況の打開策を考えていた。
今はまだの髪の毛で隠れてブラッドは例のものに気付いてない。
だけど。

「・・・・・・・・・・・・ん?」
「っ!!??」

不意にブラッドが怪訝そうに眉をひそめてジッとある一点を見つめた。
ある、一点。
つまり。


「―――――――――、ひとつ、尋ねたいことがあるんだが・・・・。」
「な、な、何?」

問い返すの声が、震える。
気のせい、だろうか。
空気が、気温が、急激に冷えて行ってるようだ。


「君の右の首筋にあるコレは、私には歯形に見えるんだがね?まさか、そんなことはないだろう?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!!!」



――――ピシッ。



一瞬にして、空気が、凍結した。
極寒地帯到来。


あああ、ああああ。
ああああああああああもおおおおおおおおおおおお!!!!!!


最悪だ。



後編へ続く→→