「ねぇ、、あんた最近あんまり遊びに来てくれないよね?
俺、何度か帽子屋屋敷まで行った事もあるんだぜ。」
「え?双子と遊びに来たとかじゃなくて?」
「違う。勿論アイツらと遊ぶこともあったけど、
それはどこ探してもあんたが居なかったからだ。双子も知らないって話だったしさ。
なぁ、何で最近俺と遊んでくれないの?」
それはあの屋敷の主人で変態のドグサレ×××野郎に監禁されてるから!!!!
とは、さすがに言えない。
はゴロゴロと擦り寄ってきているボリスから視線を逸らしながら、
適当ないい訳をして誤魔化せないものかと考えていた。
「お屋敷の仕事手伝ってるから、
結構忙しかったりして顔出せなかっただけ。特に深い意味はないわ。」
「へぇ、そうなんだ?でもその割に屋敷内で見かけなかったってのはおかしいよな。」
「それは仕方ないんじゃないの。ほら、あそこってバカデカイから。
・・・・・・・・・・・・・っていうかっ!!ボリス!!??」
「何?」
何?じゃないわっ!!このドグサレ猫!!!
はいつの間にか密着率を高めて至近距離にまで詰めてきたボリスを、
(確かにさっきまで擦り寄って来てはいたけど、
その時はまだ許容範囲内だった。今は正直シャレにならない)
両手で引っぺがすようにして振り払った。
「そんなに嫌がらなくてもいいんじゃない?最近俺、
あんたと全然遊べなくて寂しかったんだからさ。」
「どう考えてもそれとこれとは話が別でしょうが!!」
「ええー?そう言うこと言う訳?俺いい加減拗ねちゃうぜ。
って言うか、寧ろあんたのこと凄く虐めてやりたくなる。」
キョロリ。
ボリスの金色の瞳の奥が残忍な色を滲ませて細められる。
瞬間的に嫌な予感がしたは、すぐさま後ずさりをした。
獲物ターゲットモード、オン。
そんな瞳だ。
ヤバイ。ヤバ過ぎる。
「ねぇ、この際このまま遊園地に鞍替えしろよ。
あんたならオッサンも絶対いいって言うし、何より俺が大歓迎。」
「そう言ってくれるのは有り難いけど、
さすがに滞在先を変えるつもりは・・・・・。
・・・ちょっ、本気近ぁっ!!離れて、って言うか放してボリス!!」
ついさっき引っぺがした筈のボリスの手が再びに伸ばされて、
またしても至近距離まで詰めてくる。
しかもどう見てもより非力そうな細くて色白の腕が、
予想外の力でを捉えていた。
「痛いっ、爪、爪が肩に食い込んでるんですけど!!あんた!!
放せ、放してってばっ!!!ふざけ過ぎだから!!」
「悪いね、。俺、ふざけてるつもり全くないよ?
あんたにイエスって言ってほしいだけ。」
無理無理無理無理無理ぃぃ!!!
無我夢中で抵抗を繰り返し、は必死で彼の腕から脱出してやろうともがいた。
こんな所を誰かに見られて誤解されでもしたら後々恐ろしい事になる。
万が一、万が一、あのブラッドに知られようものなら、
本当に血祭りに上げられてしまう可能性大だ。
ボリスの事は好きだが、それはあくまで友達としてであって、それ以上でも以下でもない。
どうにかディフェンスをかまして逃げ切らなきゃシャレにならない。
ゴーランド!!ゴーランドが居ればっ!!
「うん?本気で嫌がってんの?。涙ぐまれちゃうと、逆にすっげぇそそるぜ?」
「こんのドS猫!!放して放せ!!放しやがれえっ!!」
「うわ、何かキャラ変わりそうな勢いだね、。」
は元々こういう女だよ!!
と、テンポのいい会話を繰り広げている場合じゃない。
その間もボリスは一向にを放してくれないし、
もで必死に抵抗を続ける。
「――――・・・・ハァ・・・分ったよ、あんたがそんなに嫌がるんだったら仕方ないね。
これで我慢してやるから、感謝しなよ?」
「これ!?って・・・・・・・・・・・・・・・?」
そこはかとなく、嫌な予感を感じつつ、は問い返す。
ニヤリ。
ドS・ドピンクのチェシャ猫は、口の端を上げて意味深に笑った。
「これ、だよ。」
言いざま、ボリスがの首筋に顔を埋める。
そして―――――――――――――――
ガブリ。
「――――――――――――――――・・・・・・・・・・・・・・・・」
の首を。
歯形がつく程の勢いで。
噛ん、
だ。
「・・・っ・・・○×\▽%■◎☆!!!!!????????」
あれから時間帯が巡り、今は夕方。
は今、帽子屋屋敷の自分の部屋に辿りついたばかりだ。
門からこの部屋までをほぼ全速力で駆け抜けた為、
ゼーハーゼーハーと息が乱れまくっている。
未だに首元を片手で抑えたまま、はよろよろと鏡の前まで足を進めた。
そして、鏡に自分の姿を移すと、恐る恐る、首元を押さえた手を外す。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・あんの・・・・あんのクサレ××××猫ぉぉっ!!!」
右の首筋。
クッキリ、ハッキリ、歯形がついてる。
猫独特の牙や細かい歯並びまで、そりゃもうハッキリと。
ここまで全速力で走って来たのは正解だった。
門番の双子はかなり訝しがってたけど、
彼らに見つかったら何を言われるのか分ったもんじゃない。
それどころかブラッドの耳にでも入ったりしたら。
「ブラッド・・・・ッ・・・!!」
冗談じゃない!!
冗談じゃない!!!
冗談じゃないないないない!!!!
あの気丈なアリスですらブラッドの嫉妬に大ビビリしてた位だ。
毎回弄られまくってるがあの嫉妬モードMAXのブラッドに敵う訳がない。
プレイヤーとして見ている分には魅力的でニヤニヤしてしまうシーンでも、
それを生で体験するとなると話は全く別の話。
殺される。
本気で殺される。
そうでなくともボリスの言っていた通り、最近出歩けない状況だったってのに。
殆どブラッドの部屋で過ごしっぱなし(強制的に)で、
ようやく今回外出出来たっていうのに。
「・・・とにかく!!まずは着替えよう・・・!そうしよう!」
は慌てて自分のクローゼットを開き、首元が隠れるデザインの洋服を探す。
この世界は時間帯が変われば洋服の汚れもリセットされるから着替えの必要は余りない。
だけどは仕事で稼いだお金でたまに街に出て洋服を買い、
時間帯によって気分で洋服を着替えていた。
だからが洋服を着替えていても周りの人間は不自然には思わないだろう。
黒のタートル・・・これにこのジャケットを合わせよう・・・。
スカートはこれで・・・よし、普通だわ。
うん、自然自然・・・・・・・問題は・・・・・。
どうにか首のボリスの歯形が隠れる服装に着替え、
はそれを鏡でチェックすると、深く溜め息を吐いた。
そう、問題はやっぱりブラッドだ。
二人っきりになると毎回決まって『そっち方面』に持っていこうとする。
そしても結局それに流される形で身を任せてしまうのだ。
何だかんだと言っても、好きな人に触れられるのは気持ちいいし嬉しい。
だけど今回ばかりはそうはいかない。
せめて歯形が消える数時間滞はブラッドとの接触は避けるべきだろう。
・・・・その後のブラッドがまた厄介そうだけど、これを見られるより数百倍マシ。
そう、時間帯が合わなくてすれ違った場合はまだどうにか言い訳が成り立つ。
でももしもこれを見られてしまったら。
確実に殺られる!!!!
マジでシャレになんない・・・・っ!
本気でビビったは、とにかく自分の部屋を出る事にした。
と言うか、数時間滞帽子屋屋敷を出て、それからどうするか考えよう。
ブラッドが死んでる昼に屋敷に戻って、
顔を合わせる前に逃走して、長い時間滞屋敷を空けなければいい訳がつく。
筈。
は取りあえずまた屋敷を出る事にした。
そして、ドアノブに手を掛け、ドアを開いたその瞬間―――――――
ガチャ
「おや?」
「!!!!????????」
色々な意味で絶妙なタイミングで、ドアの向こうから、ブラッドが姿を見せた。
――――――――最悪だ。
中編に続く→→