銃弾飛び交う赤の世界。
真っ赤に染まったハートの国。
赤い赤いワンダーランド。
優しく残酷、時間の世界。

時計仕掛けの住人達。
狂って優しい住人達。
余所者求めてハートを求めて。

いとしく、いとしく、やさしく、やさしく。
あまく、ざんこくに、のハートをつつみこむ。




―――――ねぇだけど、あんた()

ここは全部全部、最初から、アリス=リデル、
彼女の為の世界だって、忘れてるんじゃない?



意地の悪いもう一人のが囁く。
そうだ、本当はずっと前から思ってたこと。
それでもは長いことそれに目を瞑って耳を塞いでいた。


ここはにとってバーチャル。
そんなことは百も千も承知してる。
は異質だ。
は特異だ。
言い聞かせながら、それでもいつも自分で自分にいい訳をして。
見えないふりをした。
聞こえないふりをした。
知らないふりをしてた。

特に、彼の事を本当に好きになってしまったと気付いた時から。


彼がに触れる手も。
   それは本当にだけに触れたくて伸ばされた手?


彼がに掛ける声も。
   それは本当にだけに掛けられた声?


彼がに向ける視線も。
   それは本当にだけに向けられた視線?


甘い熱と深まる想い。
溺れる分だけ不安が増した。


誰が言った台詞だったか。
『ここは、来る者によって形を変える』と。
ここは最初から、アリスの為の世界だった。
分かっていたことだ。
ペーターが、アリスを幸せにする為(・・・・・・・・・)に連れてきた世界なんだから。


そしては知ってる。
正しくはプレイヤーとして見た事がある。
疑似体験。
彼がアリスに触れる手を。
彼がアリスに掛ける声を。
彼がアリスに向ける瞳を。
だから分かってしまった、気付いてしまった。
今彼がにくれる全部、全部、彼女の時と違うものだと言えない事。


けどそんなことは気にしないつもりだった。
商店街の福引で当てたあのハートの国への招待チケットを手にして、
ただこのあり得ない時間を楽しめればいいと思ってた。
はアリスとは違うって知ってたから。
割り切れると本気で思ってた。
なのには、もうここを二次元の世界だなんて笑えない。


ハートを奪われたら帰れない。
とは、よく言ったものだ。
それならそれでいいかもしれない。
ただし、心底そう思えるなら。
このハートの国に居る限りは、完全に安心できる日なんて来ないだろう。


結局はアリスに嫉妬してるだけなんだから。


だからせめて、少しでもいい。
に向けてくれるその一つ一つが、
だけに向けられるものだと安心させて欲しい。


ちっぽけな我儘。
だけど同時にとても大それた我儘だ。
のこの心の中を、あんたが知ってしまったら、その時はどう思うんだろう。
アリスがこの世界から居なくなってしまった今になって、は広がる不安を抑えきれなくなっていた。




慕う慕う、愛慕う(エリオット=マーチ/Title by不在証明)





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