霧に溺れる

はここ最近似たような夢を立て続けに見てる。
夢で見る場所は大体いつも同じだった。
但しその場所は決まって今の居るこの世界じゃなくて、
元居た世界の高校の教室やの部屋の中だったりした。
住み慣れた筈のその部屋で、通い馴れたはずの学校の教室で、
その校舎内のどこかで、はいつも『誰か』を探してる。
そして、日常のはずのその毎日に何故か違和感を覚えて、
その答えをが無意識に探してる『誰か』が握ってる気がした。
悪夢とは違う。
そんなぞっとするような嫌悪感を抱くようなものじゃない。
だけど、その夢を見た後はいつも訳もなくただただ不安だった。




――――信じる信じないはお姉ちゃんの勝手だけど、もうお姉ちゃんは前に居た場所には戻れないんだ。
お姉ちゃんが前居たところには、別の世界のもう一人のお姉ちゃんが行っちゃったから。
だからお姉ちゃんはその別の世界のお姉ちゃんが居た世界に行かなくちゃいけないんだよ




おかしな話だとは思う。
あの変なちっちゃな男の子にこの世界に連れてこられる前までは、
あっちがにとっての日常だった。
この世界こそ夢みたいな場所で、あり得ない世界だったはずだ。
それなのに今は、前の世界の夢を見て、その世界の中で違和感を覚えてるんだから。
だけどもう、今のにとってはこの世界、
この『BL学園』での学園と寮生活こそが日常になってた。
あの不思議な場所で会った不思議な男の子ははもう元居た世界には戻れないって言ってたけど、
もしも、もしも万が一、あそこに戻れるって選択肢が出た場合、はどうするだろう。
ここに来たばかりの頃みたいに、
ここでの生活はそれこそ本当なら絶対に出来ない二次元を楽しむ一時的なもので、
戻れるならさっさと元の世界に戻りたいと思えるだろうか。
無理だ。
今のは、もうこの場所に愛着を持ちすぎた。
勿論元居た世界の家族や友達も大事だし、戻れる方法があるんだったらと迷うに違いない。
だけど、あっさりと向こうの世界にはきっと戻れないだろう。
ここは居心地が良すぎる。
それにの居場所は、ここにも出来てしまったから。
大好きな従兄弟を始め、兄代わりで実は理事長な同級生、
頼りになる先輩や気の置けない仲間、先生達。
恵まれた環境に充実した毎日。


そして何より、ここにはの好きな人が居る。


ここでの生活を、手放せないし、手放したくないと思える程の相手だ。
悔しいけど、の毎日は、
彼の存在で前よりももっと意味あるものに思えるようになってた。
夢の中でがいつも探してる『誰か』ってのは、彼のことじゃないんだろうか。
元居た世界には当然のように彼は居ない。
だから無意識に探してたのかもしれない。


ホントに悔しいことだけど、そう言う理由に出来るくらいには、
はあの人を好きだった。


そうだ、こんな柄にもなく乙女な思考を働かせるほど。
だからこそ不安になる。
ここ最近ずっと見てるその夢に。


もしもある日突然、今の生活がなくなったらなんて、
もう随分長い間そんなこと考えもしなかったのに。
今は怖くて、不安で。


まったく、どうしてくれるんだ。
こんな、情けないくらいに形のないものに怯えるなんて、ホントに馬鹿げてる。
だけどどうしてもこの不安がの中から追い出せない。
どう考えてもあの人のせいだ。


そう思うことがどんなに勝手なのか分かってるけど、
もう何度もあんな夢を見てるせいで、夢を見た直後はそんなことを考える余裕もなくなる。
そして今日も食の後にシャワーを浴びて軽く転寝してる間に夢を見た。
の中の不安はここのとこ何度も似たような夢をみてたせいでこれ以上になく膨れ上がってて、
ただ、彼に無性に会いたくなった。


中嶋の居る学園の生徒会室に行く。