「・・・マジ痛い・・・」
うううー。
呻き声と一緒に両手でお腹を抑え、はずるずると足を引きずる。
生理痛がこんなに激しいのは久しぶりだ。
一応朝の内に痛み止めを飲んではいたけど、
そろそろ効き目が切れてもおかしくない時間ではある。
それにしたってここ数カ月は生理前の痛みも、
それなりに我慢出来る程度のものだったから安心してたのに、
久しぶりにドカンとデカイ波にぶちあたってしまったようだ。
お腹だけでなく腰にまで痛みが来てる。
生理痛の時に飲む痛み止めは常備してる訳じゃなく、特にこっちに来てそこまで酷くなかった事も有り、
油断して残りの薬は寮の部屋に置いて来てしまった。
これはもう、保健室のお世話になるしかないのだ。
あそこには松岡先生が居るし、彼は勿論男性だけど、
保健医ってだけじゃなくてこう言う相談も他の人間より格段にし易い。
壁に沿って足を進めながら、無理やりに一歩一歩と歩を進めた。
たまに休憩を取りつつ、保健室を目指す。
さすがにこんなこと啓太に話す訳にも行かないし、
和希は、まぁ何となくの様子でそれなりに察してくれては居たみたいだけど、
それでもあの二人と一緒の時は薬が効いてた時間だったから、
既にここに来て数ヶ月たつし、気付かないふりをしてくれてたようだ。
だけどやっぱりこう言う時思ってしまう。
同い年の同性の友達が居れば、まだ幾分か理解して貰えただろうに、と。
まぁ勿論、共感して理解して貰えたところで痛みは収まったりしないんだけど、
薬を貰えたりとかそれとなく一緒に保健室に付き添ってくれたりなんかはしてくれる筈だ。
ここじゃ周囲の生徒は皆男子生徒で、は勿論その中の一人。
それを分かって望んで無理やりにここに潜り込んだのは他でもない、自身、
と言うかまぁこっちの世界のだ。
ここでの生活は女のにとって細かい部分で不便を感じる事も多いけど、
それ以外では十分恵まれてると思う。
施設面でも勉学の面でも、そして周囲に居る人達だってそうだ。
この世界に来て、このBL学園に来られて本当に良かったと思ってる。
とは言え、まぁ、こう言う自分が女だからこそって言う痛みに襲われた時の状況は、
やっぱり何だかんだで色々考えはする訳だけど。
「ん?おい、お前、そんな所で何やって・・・、ってじゃねぇか!」
「・・・・・・・・・・うっげ・・・」
「フッ、随分とご挨拶だな、」
壁に寄りかかって少しの間休憩を入れている所に、長身で対照的な外見の男子生徒が二人、
に声を掛けて来た。
言わずと知れた生徒会のお二人。
生徒会長・丹羽哲也と副生徒会長・中嶋英明だ。
今は周囲に余り人気はないけど、生徒達が居たとしたら間違いなく一斉に注目を浴びてたところだろう。
生徒会は色んな意味で慕われ、そしてある意味恐れられてる存在だから。
まぁそれはさておき、今、この状況でが顔を合わせたい人間じゃない事だけは確かだった。
会計部の二人ならともかく、生徒会の二人はの性別を知らない。
「どうしたんだ?お前、顔色悪ぃな。腹でも壊したか?」
「あー・・・いや、まぁ、そんなようなそうでもないような・・・」
は、はははは。
無理やりに笑い声を作りだしつつ、心の中で「早く去れ早く去ってくれ」と強く念じてみる。
本当に、今は一刻も早く保健室に行って松岡先生に薬を貰いたかった。
「んだぁ?拾い食いでもしたか?」
いやいやいやいや!!あんたと一緒にせんで貰えますか!?
と言う、いつもなら速攻口に出来るツッコミも今はする余裕がない。
丹羽の隣の中嶋はまるでを観察する様な瞳でジッとこっちを見下ろしていた。
そして何かに気付いたように静かにに質問する。
「・・・腰も痛いのか?」
「え?あ、・・・いや、・・・はい・・・」
「何だ、腹も腰も痛いのかよ。何やったんだ?お前」
「・・・いや、特には。・・・まぁそんな訳で、オレは保健室に行きます。それじゃ」
取りあえずこのままここで足止めされる訳にも行かない。
は無理やりに壁から体を引き剥がすとしゃっきりと立ち直し、
そのまま軽く頭を下げてその場から立ち去る。
すぐ先の角を曲がる所まで我慢すればあの二人も無理についてきたりはしないだろう。
は痛みでぐるぐるする頭をどうにか堪えつつ、スタスタ歩き始めた。
「おい!!お前一人で大丈夫なのかよ!!・・・って聞いちゃいねぇな、ありゃ。
なぁ、ヒデ、アイツ結構ツラそうだったが、一人で行かせても平気だと思うか?」
「さぁな、本人は随分と俺達から離れたがっていたように見えたが・・・」
生徒会コンビと別れて廊下の角を曲がった所ではまた壁際に身を寄せた。
深い息を吐いて、お腹を抑えた手を少しだけ緩める。
この分だと保健室までの道のりは中々厳しそうだ。
は無意識に遠い目をしてしまった。
そこで不意に背後から声を掛けられる。
→ 「あれっ?じゃないか、どうしたんだい?こんな所で」
→ 「、待てよ!俺もっ・・・っと、何だ、まだここに居たのか」
→「・・・やはりまだここに居たか、」