突然ラブコメ!?

がこの世界に来て、
そしてこのBL学園の生徒として生活し始めて気付けば結構な時間が過ぎてる。
少なくとも今じゃここの生活に馴染んで個性豊か過ぎる彼らを『キャラ』じゃなく、
同じ学園で過ごす仲間や先輩として極自然と接することに以前ほど疑問を感じなくなった。
周囲が男子だらけの学園島で男子生徒を演じてる自分にも慣れたし、
ひやひやすることが全くないとは言えないけど、
性別がバレるようなピンチも無く順調に毎日を送ってる。
で、そんな数ヶ月を過ごしてが気付いたこと。



―――――何か、前の世界に居たときよりモテてるんですけど。




自慢じゃないけどBL学園に来て少なくとも4人に告られてる。
しかも揃いも揃って結構なイケメン達だったように思う。
ここで単純にモテ期到来☆と喜べるなら良かった。
異性に好意を寄せられるのは、例え自分が相手をよく知らなくても余程怪しい人物じゃない限り、
そして後々ストーカーまがいなことをされたりしない限りは、悪い気はしないものだ。
だがここでひとつ大きな問題がある。
たった今は彼らを異性だと言った。
それは間違いない。
から見れば彼らは間違いなく異性だ。
だがしかし。
だがしかし。
何度も言うけど、ここはBL学園、全寮制の男子校。
そして今更確認するまでも無くは『男子生徒』としてここに潜りこんでいる。
つまり、彼らにとっては男、同性な訳だ。
それを承知でに告って来てる。
「男同士でこんなこと困るかもしれないけど・・・」みたいな前置きはあれども、
最終的に告白を決意する当たり、何と言うかさすが『BL学園』の名に恥じないというか。
まぁそれはさておき、つまるところこの学園でモテてるは『男』として、
である訳で、複雑な気分極まりない状態だったりする。
因みに、当然のように告白の返事は「ごめんなさい」だ。
そして今日もまた1人になったところで声を掛けられ、告白をされた。



◇◆◇



君はモテモテですね。これで5人目ですか」


和希と啓太と一緒に訪れた会計室。
七条の淹れてくれたお茶を一口啜り、深い溜息を吐いたに、
彼はいつもの胡散臭さ満点の穏やかな笑顔を浮かべて言った。
思わずティーカップを取り落としそうになりながら、はジロリと七条を睨む。


「・・・な、何で七条がそのこと知ってんの?情報早すぎでしょうが。
・・・、まさか二人とも・・・」


それはないだろうと思いつつ、と同じソファに座っている和希と啓太に視線を向ける。
案の定、彼らは揃ってそれを否定した。


「俺、言ってないからな、


啓太がそう口を開くと、和希も頷く。


「俺も。お前が嫌がること分かってるんだから、言ってないよ」
「だよね」


じゃあ何で七条は知ってるんだと、再び七条に視線を向けるも、にこにこ笑顔を返してくるだけだ。
あああ、本当、前に画面越しに見てた時に西園寺が啓太に言ってたけど、見れば見るほど胡散臭い笑顔だ。
達の様子を見ていた西園寺がふっと呆れたような溜息を吐いた。


「滝だ、アイツがお前が告白されている姿を偶然目にしたらしい。そうだな?七条」
「おやおや、郁がバラしちゃいましたか。
僕の口からは誰から聞いたのかは言えないことになっていますが、仕方ありませんね。そういうことです」


七条は笑顔のまま西園寺の言葉を肯定した。
というかどう考えても隠す気なんて全然なかったみたいな態度だ。
寧ろ真っ先にこの話題を持ち出した辺り、面白がってるとしか思えない。
そこで啓太が呆れ交じりの苦笑を零した。


「俊介かー・・・ハァ、まったくアイツは・・・」
「ってことは多分、成瀬さんや王様にも伝わってるな」


啓太と同様呆れ口調でやれやれと和希が言った。
既に七条が知ってることからも間違いない。
アイツは成瀬や丹羽にも同じことを話してるだろう。


「・・・・・・・・・・・・しゅーーんーーすーーけーーーめ!!!!」


ガッデム!!!
とばかりには拳をぷるぷる震わせる。
人事だと思ってネタにしやがって、今度顔合わせたら一発ぶん殴ってやる。
きっと何故か篠宮や岩井まで知ってるって状況にまでなってるに違いない。
腹立たしさを少しでも紛らわそうと、はまた手元の紅茶を啜った。
ここで飲む紅茶や珈琲はいつも本当に美味しい。
いい茶葉や豆を使ってるのは勿論、七条の淹れかたが上手いのもあるんだろう。
おかげでさっきより少しだけ気分が落ち着く。


に告白とか、何かこの学園の生徒って分かんないわ・・・。
それともやっぱり、男だった方がモテたってこと?
・・・つまり女としての魅力はないと・・・」


ほぼ独り言みたいにぶつくさ呟いて、はまた深い溜息を吐いた。
会計の二人を含め、の性別を知ってる人間ばかりだからどうにも気が緩んでしまう。
それにしても本当に複雑すぎる。
男子校の男子生徒として潜り込んで、男子にモテるなんて。
これで他に女子生徒がいてそっちにモテたんだったらまだ少しは救いがあるけど。
いや、やっぱりそれも微妙か。
それにしても今の状況よりはもう少し納得がいくような気がする。


「そんなことはありません。君はいつだって可愛くて魅力的ですよ」
「そうだな、性別など関係なく、お前は人として好ましく、愛らしい存在だと思うぞ。
啓太とはまた違った魅力がある」
「ここの生徒がお前に惹かれるのは、
無意識にお前の女の子としての部分を意識してるからじゃないかと思うけどね。
そんな落ち込むことないって、寧ろ喜ぶところだろ?」
「そうだよ。俺、は・・・その、学園で一緒になって、
昔よりずっと綺麗になったなって思ってたんだ」


何だか皆が揃ってフォローにまわってくれてる。
これはこれで照れるけど、気を使わせてしまったってことだろう。
あり難いと言うか恥ずかしいというか。
は思わず顔を赤くして4人から視線を逸らしてしまった。
さすがに彼らの言ってることを真に受けた訳じゃない。
お世辞的な意味が含まれてることは十分分かってるつもりだ。
とは言え、忘れちゃいないけど、ここにいる4人は揃いも揃って顔整い軍なんだから、
もしこの学園に女子生徒が居たら間違いなくは殺されてる。


「ありがと、皆。でもさ、絶対なんかより啓太の方が人気あると思うんだよね」
「はぁ!?何言い出すんだよ!?!どうしてそこで俺が出てくるんだ!?」


の発言に啓太は驚いた様子で声を上げた。
予想通りの反応だ、可愛い奴。
でもこの見方は正しい自信がある。
何てったって我が従兄弟殿はあの『伊藤啓太』だ。
そしてここはベルリバティスクール・BL学園。
彼が愛されないわけがない。


「単に啓太の周りに怖い人たちとか有名人とか揃いすぎてて手が出せないんじゃないかなと」
「理由になってないだろ!」
「確かに伊藤君は人気が有りますからね。成瀬君みたいな強烈なラブファイターも居ることですし」
「ふふっ、そうだな。啓太の可愛さは私も認めている」
「確かに啓太の周りは濃いよな。啓太が色んな人から好かれるのも分かるけどさ」


怖い人と有名人達が今度は啓太に向けて笑顔を浮かべる。
間違いなく鉄壁のディフェンスの一部のくせに、その部分はスルーするつもりらしい。
和希も一見普通そうに見えて実は自分だって十分『濃い』部類の人間の癖に他人事のような口調でのたまった。


「もう!西園寺さんも七条さんもからかわないで下さいよ!和希!おまえもだぞ!
っていうか、!お、お前のせいだからな!」


照れた啓太が真っ赤になって怒鳴る。


バンッ


そこで突然、会計室のドアが乱暴に開かれた。
ノックも声掛けもなしにいきなりここのドアを開ける無礼者なんぞこの学園には一人しかいない。
多分、達の誰もが同じ人物を思い描いて視線をそっちへ向けた。


「よぉ!皆揃って随分楽しそうに話してるじゃねぇか!俺も混ぜてくれよ!」


案の定、その場に姿を見せたのは我が校生徒会長・丹羽哲也だった。


「丹羽・・・、ノック位しろといつも言っているだろう。何の用だ?」


即座に呆れのこもった冷ややかな視線と同じく冷たい口調で西園寺が言った。


「ちぇっ、相変わらず郁ちゃんは冷たいねぇ。別に用事なんざねぇけどさ、
この辺通ったら丁度啓太の声が聞こえたから、俺も入れてもらおうと思ったんだ」


言いながら、丹羽は主の許可なしにズカズカ会計室に足を踏み入れた。
まぁ、これもいつものことだけど。
そして丹羽はに気付くと少し驚いた様子で瞳を見開く。


「お!じゃねぇか!聞いたぜ、お前、また野郎に告られちまったって?」
「・・・、丹羽先輩、確認するまでもないですけど、それ、やっぱ俊介から聞いたんですか?」


再びぷるぷる拳を震わせ、は口元を引きつらせつつ丹羽に問う。
丹羽は当たり前だろうという表情で頷いて見せた。


「おう、ご丁寧にソイツの学年と名前まで教えてくれたぜ」
「・・・・俊介、マジコロス!!」
、落ち着いて」


体全体から殺意をみなぎらせるの肩を啓太がぽんぽんと優しく叩いた。
本当に可愛いやつめ。
でもやっぱり俊介は許せない。
今度アイツの食事に下剤でも混ぜてやろうかとは半分本気で考えてしまった。


「なぁ、、お前、もし俺達の誰かから告られたらどうする?
ここに居る奴らだけって意味じゃなくてよ、お前の知ってる奴らって意味だぞ」
「・・・・・・・・・は?」


丹羽が突然意味不明な質問を投げかけてきたので、
思わず瞬間的に俊介のことがの頭からすっぽ抜けた。
意味不明というか、何故そんな流れになるのか。


「いやいやいや、オレ、男ですよ?」
「おう、そりゃ分かってるぜ?だけどまぁ、例えばの話しだ。誰からの告白なら受けてもいいと思うんだ?
こんだけ男から告られてんだし、あり得ねぇこともねーだろ」



いやいやいやいや。
いやいやいやいやいや。
本当に何言ってんの、この男は。


「丹羽先輩、オレのことからかってますか?」


「それは僕も興味がありますね」
「ふん、下らない話だが、の答えを聞いてみるのも悪くないな」
「ほらな?郁ちゃんや七条も興味あるってよ」


流れが、話の流れが訳が分かりませんが!?


何故そこで丹羽の奴にそんな質問をされるのかも分からないし、
そんな話に何故よりによって七条や西園寺が乗るのかも全く分からない。
は咄嗟に我が従兄弟殿と和兄様に助けを求めるように視線を向けた。
が、しかし。


「ま、例え話だからさ、冗談って言うか、ノリでいいんじゃないか?」


なんぞとのたまう和希の裏切り者。
啓太のことは庇うくせに、はその扱いか。


、冗談だから」


啓太、お前もか!!!


気の毒そうに苦笑しつつもの救世主となるはずの啓太は結局味方してはくれなかった。
こうなると唐突に訳の分からない質問をしてきた丹羽を恨むしかない。
とは言え、曖昧に誤魔化すとかそう言うのも何故か許されなさげな空気で。


「で?どうなんだ?


しかも丹羽は更に答えを促してきた。
何でそこまでしてそんなことが知りたいんだ。
取り合えず適当な名前出して適当にネタにして適当に乗り越えてやる。
と、思ったのも一瞬で、この面子相手にそれが通用する訳もないとは悟っていた。
思わず本気で眉間にしわを寄せて考えてしまう。
何故が似非BL相手を選ぶのにこんなに本気で考え込むことにならなきゃいけないんだ。
丹羽のやつ、今度殿様でもけしかけてやろうか。
はぁーーーっと深く大きな溜息を吐き、は仕方なく答えを口にすることにした。



「・・・、じゃあ・・・和希とか」
「・・・・・・、・・・な、中嶋先輩・・・は・・・絶対ない・・・か」
「・・・啓太かな」
「七条って言ったらやっぱ驚くよな」